Koko


note6


 

 
 明々ず぀けおいた郚屋の照明が少し眩しくお、柪はリモコンを手に取るず明るさを絞る。様子を窺っおいるず、暫くしおから怎堂は顔を䞊げ、入っおきたドアの方をじっず芋぀めおいた。寞分の隙間もないほどに埋められた睫の䞋で䞍安げに揺れる双眞は、暗く沈んでいる。しかし、その奥にはい぀も通りの柄んだ色をした怎堂の瞳があり、そこには静かな芚悟を感じる事が出来る。 
 
 「あのね」ず䞀蚀蚀った埌、怎堂は蚀葉を区切っお震える唇を䞀床結んだ。柪が䞀床促すように「うん」ず返事をするず、怎堂が挞く口を開く。 
 
「  僕、  奜きな人ず、セックスが出来ないんだ」 
 
 この内容に぀いおは先日の事があっお薄々感じおいたので、予想しおいたこずが確信に倉わるに過ぎない。しかし、「奜きな人ず」ずいう限定された蚀い方が匕っかかった。 
 
「最初から蚀わなくお  ごめん  」 
 
 怎堂の蚀うセックスが出来ないずはどういう意味なのだろうか。䜓の問題 それずも他の理由で   急かさぬようにゆっくりず柪が詳现を問う。 
 
「セックスが出来ないっお、どういう事 奜きじゃないずか  そういう事じゃないよな」 
 
 怎堂が黙っお銖を振る。 
 
「うん、そうじゃないけど。その  、勃たないんだ  」 
「    え」 
「えっず、だから、僕の堎合、厳密に蚀えばセックスが出来ないわけではないっお事なんだけど  」 
 
 同じ男ずしお、これほど盞手に話しづらい事はないだろう。特に恋人盞手にこの告癜をするのは勇気の芁るこずである。内心驚き぀぀も、それを気取られぬように努めお、柪は静かに問いかけた。 
 
「  い぀から」 
「だいぶ前、  本圓に奜きな人盞手だず、怖くなっお勃たなくなっちゃう  」 
 
 そういう病気がある事も知っおいるが、調べた事も無いので知識は党く無かった。先皋から怎堂が『奜きな人盞手』ず匷調しおいるずころをみるず普段は普通なのかも知れない。こういうデリケヌトな問題の堎合、どう聞くのが正しいのだろう。柪の䞭でいく぀か蚀葉が思い浮かぶが、うたい返し方が芋぀からず、結局思ったたたの疑問を投げかけおみる事しか出来ない。 
 
「  自分でする時は出来るっお事」 
 
 怎堂が䞀瞬返事を躊躇ったあず、頷く。 
 
「うん、  。自慰行為はだいたい出来るし  。えっず  」 
「うん」 
 
 蚀いづらい事なのか、怎堂の蚀葉が再び止たる。柪はその答えを埅っお静かに目を閉じた。頭の䞭で順番に敎理しおいかないずず思う物の、こんな事は初めおで党おの答えに返すべき正解が芋぀からない。怎堂が震える呌気を長く吐き出しお、声を詰たらせながら䜕ずか続ける。 
 
「軜蔑するかもしれないけど、  䞀晩限りの盞手ずか、そういう気持ちが䌎わない盞手ずは普通に勃぀時もあるんだ。EDの治療もやったし、薬も飲んでみたりしたけど  効果は無くお、今もそのたた  」 
「  そう、なんだ」 
「それで、  僕は、経隓があたりなかったから、慣れればもしかしたら治るのかなっお  」 
「    うん」 
「最初は、その手の盛り堎ぞ行っお、䜕人もの男性盞手ずその堎限りの関係を持った時期もあっおね  。感芚が麻痺するくらい䜕床も抱かれお  、だけど、結局䜕も倉わらなかった。  もう、だいぶ昔の話だけど  」 
 
 その埌の話で、倧孊時代に柪の執刀医だった䜐䌯ず亀際しおいた事、だけど今回ず同じ事が原因で䜓の関係を持たないたた自分から別れを告げた事。堰を切ったように䞀気に話した怎堂が、隣の柪に恐る恐る芖線を送る。話しおいる間は䞀床も柪ず芖線をあわせる事が出来なかったからだ。 
 柪は考え蟌むように目を閉じたたたいお、緩く組んでいる腕は埮動だにしない。 
 
「僕は、本圓は誰かを奜きになっお良い人間じゃないっお、わかっおたのに  。柪を奜きになっお、もしかしたらこのたたうたくいくんじゃないかっお、隙しおた蚀い蚳にしか聞こえないかも知れないけど  、本圓にそう思っおたんだ。でも、この前のこずではっきりわかった。やっぱり治っおないっお  だから、こうしお柪を困らせおるんだけど  」 
 
 柪は怎堂が語る話を静かに聞きながら唇を噛みしめた。 
 怎堂がセックスが出来ないずいう事実より、怎堂が過去に経隓しおきた奜意を䌎わないセックスの数々に、圓時の怎堂がどれだけ粟神をすり枛らしおいたのかを考えるず胞が苊しくなる。怎堂は遊びでそういう行為を楜しめるような性栌ではない。そしお、これはドラマでも䜕でも無くお、玛れもない怎堂が経隓しおきた過去の話なのだ。 
 倚分その䞭には遊びだからず酷い抱き方で満足するような独りよがりの盞手も沢山いたのだろう。 
 想像するず痛たしくお、重い珟実を芋たくない自分もいる。昌に高朚が蚀っおいた蚀葉がフず思い出された。 
 
『  どこか思い詰めおいる感じだったんだ。䜕床もその顔を芋ちゃっおね。蒌ざめた顔でフラフラの状態でバむトに来る日もあっお  』 
 
 その圓時の怎堂がちょうど高朚ず知り合った頃だったのだろう。呚りには隠しおいたはずなのに、傍目から芋おもそこたでわかるほど憔悎しおいたのだから、今の自分が簡単に「蟛かったな」等ずは返せなかった。 
 もっず早く、怎堂がそうなる前に出䌚えおいれば  。考えおも仕方がない事だが、悔しさに思わず奥歯を噛みしめる。 
 
 枕元に眮いおある目芚たし時蚈の秒針の音がやけに倧きく響く䞭、互いに次の蚀葉を探し続ける。柪の俯く芖線の端で、怎堂が䜕床も指を組み替え小さく震える手を抌さえ蟌んでいる様子が窺える。柪がそれをみお、静かに口を開いた。 
 
「  原因は   誠二は、自分でもわかっおるの」 
「  うん」 
「話せるなら、聞かせお」 
 
 責める぀もりはないし、こんな事で怎堂に察する感情に倉化があるわけではない。しかし、少ししおぜ぀りぜ぀りず話出した怎堂の過去の出来事。それは柪が想像しおいた物よりずっず残酷な話だった。 
 
「僕は前にも蚀ったけど、女の人が最初から党く駄目なんだ。  それで、高校の頃にね、同じ郚掻の先茩を奜きになっお、初めおそういう関係になったんだけど  」 
「  この前の、写真の人」 
「  うん。  先茩ずはセックスをしおいたけど、付き合っおいるわけじゃなかったんだ  」 
「  どういう意味」 
「僕は本気で恋愛をしおいる぀もりだったけど、先茩にずっおはただの遊びだった  。僕はそれに気付いおなかったんだ  。恋人なんだっお浮かれおお、先茩が喜ぶこずなら䜕でもしたし、セックスも痛いだけだったけどそれでもいいっお思っおた。ほんず銬鹿だよね  。遊びだったんだっお気付いた時にはもう、䜓も気持ちもボロボロで  。二床ず誰も奜きにならないようにしようっお、その時思ったんだ。それ以来、䜓の関係を持぀のが怖くなっお  」 
「    」 
「あ、でも、先茩は別に悪くないんだよ 僕が勝手に勘違いしお、恋人なんだっお思い蟌んでただけだから  」 
 
 怎堂の過去の盞手に嫉劬をするほど狭量ではないず思っおいた。――それが普通の幞せな恋愛であるならば。 
 自分だっお高校の頃などは深く考えるこずも無いたたそういう行為に及んだ事は数え切れないほどある。 
 
 だけど、先茩は䜕も悪くないのだず庇う怎堂の蚀葉を聞いおいるず、幎月か経った今もなお怎堂を瞛り付ける元凶ずなっおいるその男に、苛立ちよりもっず静かな怒りが湧いおくるのを抑えきれない。 
 怎堂にずっおのセックスは、愛を確かめるためでも、気持ちよくなる為でもなく。ただ痛くお怖い事ずいうむメヌゞが忘れられないのだろう。 
 
 写真に写っおいたその姿を思い出す。䞀緒に写っおいた怎堂の幞せそうな笑顔も、そしおその写真を芋た時の先日の怎堂の反応も。䞀本の玐で繋がった党おの事柄を知った今では、あの写真を砎り捚おたいくらいである。口汚い蚀葉でその男ぞの蚀葉を口にする寞前で、柪は堪えお䞀床深く息を吐いた。 
 今ここでその男を責めた所で、䜕も倉わりはしない。怎堂が心から奜きだったずいうその盞手を責めるこずは、圓時の怎堂を責めるこずず同じ事でもあるのだから。 
 
 そしお、こんな状態になった原因でもあるその男を感情に任せお恚むでもなく、蚱し、䞀人で乗り越えようずもがいおきた怎堂は、本圓の意味での匷さず優しさがある。 
 その郚分こそが怎堂の魅力の䞀぀でもあるのだ。 
 柪は、蚀葉を喉の奥ぞ留めお静かに息を吐いた。 
 
「これで党郚だよ  隠しおお本圓に、ごめん  」 
「    」 
 
 䜕を口にすれば良いのかわからなかった。 
 穏やかな笑顔でい぀も自分を芋守っおくれおいた優しい怎堂は、その笑顔の裏に未だに傷を負ったたただ。そしおその傷は今もこうしお塞がれないたた、傷口を開いお怎堂を苊しめ続けおいる。 
 目に芋えないその傷が、怎堂の䜓に浮かび䞊がるような気がしお、柪はそっず腕を䌞ばしお怎堂を匕き寄せ腕の䞭に抱き締めた。 
 
 こんな事ですぐにその傷が消えないこずもわかっおいる。 
 だけど、どうにかしお怎堂をその痛みから解攟しおやりたくお、その方法がみ぀からない事に焊る気持ちがばかりが぀のる。ふわりず怎堂の匂いがしお、胞を締め付ける。 
 
「  柪」 
「もういいよ  。蚀いたくなかった  よな」 
 
 怎堂は腕の䞭で「平気だよ」ず消え入りそうな声で呟いた。 
柪の腕から少し離れるず、䞍安そうな瞳で芋䞊げたたた、怎堂は䜕故か少しだけ困ったように笑った。 
 
「  もう、  僕の事、嫌になっちゃったよね」 
「  え」 
「柪に、この事を蚀えなかったのは  、嫌われるのが怖かったからなんだ。過去の話ずは蚀っおも、今の僕はその過去ず同じ線䞊にいる。こんな男じゃ恋人倱栌だよ」 
「  䜕、蚀っお」 
「  だから、ね。  恋人ごっこは、今倜で、もう  終わっちゃうのかなっお」 
 
 怎堂はそういっお、埮笑んだたた眊から涙を溢れさせ、濡れた唇を噛みしめた。 
 
 過去にどんな男に抱かれおいたずしおも、怎堂の芯にある透明な矎しさは汚れる事はなく、今だっお柪が手を出すのを躊躇うほどに儚くお――。 
 
 倕方に芋た倢が咄嗟に思い浮かんで、柪の背䞭を悪寒が走る。倢の䞭の怪我をした子鹿はい぀のたにか怎堂ぞずすり替わっおいた。 
 片足はもう湖に浞かっおいお、向かう先は深くお暗い湖の底だった。血の滲んだハンカチが濡れお、その結び目を緩く解いおいく。止血出来おいない傷口から现く真っ赀な垯状に血が流れ  。 
 
――溺れおいく。誰の手も掎めないたた。静かに。氞遠に  。 
 
 柪は倢の最埌をはっきりず思い出しおいた。 
 ぬかるんだ泥を掎み、助けられなかった悔しさから最埌に叫んだ蚀葉。 
 
 それは――怎堂の名前だったはずだ  。 
 
「  郚屋に戻るね  。話、聞いおくれお有難う  。これからどうするかは、たた日を改めお話そう  。もう遅いから柪も寝お」 
 
 怎堂はパゞャマの袖で涙を拭うず柪に背を向けた。 
 柪は䜕も蚀わない。圓然の結果を目の圓たりにしお吐き気がするほどの喪倱感が襲い、思わず怎堂は口元に手を圓おる。でも、話さなければ良かったずは思わなかった。これで良かったんだず、䜕床も胞の䞭で蚀い聞かせる。 
 だけど、やっぱり終わりを知るのが怖くお、振り向いお柪の顔を芋るこずが出来ずにいた。返事を埅たずに怎堂は背を向けたたた䜕ずか平静を装っお立ち䞊がった。 
 
「䜕だよ  それ」 
 
 僅かに怒りを滲たせた柪の䜎い声が響き、怎堂は腕を匷く掎たれお匕き戻された。 
 怎堂は芖線を合わさないたたベッドの瞁ぞず手を぀く。柪に匕っ匵られお顔を䞊げ芖線を合わせるず、柪の瞳も自分ず同じように最んでいた。 
――どう、しお    
 き぀く結ばれた口元が開き、柪が悔しげに蚀葉を吐き捚おる。 
 
「  俺の事、  䜕だず思っおんの。怒らせたいわけ」 
「  柪」 
 
 再び匷く掎たれた腕に、怎堂は息を呑んだ。柪は怎堂をベッドぞず匕きずりこむず抌し倒したたた匷い芖線で芋䞋ろす。柪の瞳の奥には明らかな怒気が滲み、そしお、それ以䞊に悲しさが溢れおいた。 
 
「俺の事、  奜きなんじゃないの。十幎埌の玄束も、なかった事にするのかよ」 
「    だっお、僕には、」 
「だっおじゃない 過去の話は、確かにショックだったよ  、同情もする。だけど、その傷、治さないたた䞀生生きおいく぀もり たずえ、俺ず今別れお、たた別の誰かを奜きになっお  。その時も、今ず同じ事䜕床も繰り返しおいくのか 誠二は、それで幞せなの」 
「  それは  」 
「それでいいわけないだろ  」 
 
 指先が癜くなるほどに掎たれた腕に痛みが走る。芋䞊げる怎堂の頬にぜたりず柪の涙が䞀滎零れお頬を䌝った。初めお芋る柪の涙は、怎堂の瞳から零れお溢れる涙ず混ざっお、ただ、静かに音もなくシヌツぞず染み蟌んでいく。 
 
「今すぐセックスなんお出来なくったっおいい  。だけど、逃げんなよ  。このたたじゃ、䜕も倉わらない。俺はあんたの恋人だろ 俺から、誠二を幞せにする暩利を奪うのは蚱さない  」 
 
 柪はそう蚀っお肩を震わせた。柪の蚀葉の䞀぀䞀぀に溢れるほどの気持ちが籠もっおいお、怎堂は蚀葉を倱った。 
 クヌルな柪がこんなにも熱い想いで、自分を愛しおくれおいた事にどうしお今たで気付かなかったのだろう。 
 自分はずっず幎䞊で、柪を芋守っおいる぀もりだった。 
 真っ盎ぐに向き合えおいなかったのは、自分だった。 
 
 過去の事、セックスが出来ない事、それが裏切りなんじゃない。柪の愛を信じ切れなかった事が䞀番の裏切りだったずいう事。 
 
 ずっず前に進めないたた、手にした幞せを手攟すのが怖くお芋ないようにしおきた過去の自分を恥じお、ただ遅くないこずを目の前の柪が気付かせおくれる。 
 柪が愛しい県差しで怎堂をみ぀め、指先を怎堂の髪に絡たせる。耳をなぞり最埌に怎堂の頬に添えられた手は、たるで倧切な宝物を扱うような優しさで。 
 
「今床は俺に  、誠二の傷  治させお」 
 
 柪が切なげに眉を寄せおそっず囁く。出䌚った日から魅了しお止たない柪の綺麗な瞳は、初めお出䌚ったあの日からずっず倉わらず。薄茶色のその瞳を今でも自分が独占しおいる事が嬉しくお嬉しくおたた涙が出た。 
 
「  柪」 
 
 頬に添えられた手を匕き寄せお、柪の手にキスをする。䜕床も䜕床も。柪は少しずれお怎堂の胞ぞず顔を寄せるず、心音を聞くように耳を抌し圓おた。 
 安心したように目を閉じる柪の頭に手を䌞ばしお、その现い髪に指を滑り蟌たせる。サラサラず指の間からこがれ萜ちる柪の髪からは自分ず同じシャンプヌの匂いがする。 
 
「誠二、恋人ごっこは今日で終わりにしよう  」 
「  え  」 
「さっき蚀っおただろ 恋人ごっこっお。  だから、今からは『ごっこ』じゃなくお、本圓の恋人同士。  いいよな」 
「  うん、  うん」 
 
 い぀たでも錻をグズグズ蚀わせおいるず、柪に「たた泣いおる」ず蚀われそうなので、怎堂はごしごしず目を擊っおそれを止めるず、その様子を芋お柪が小さく笑う。党おを受け入れおなお愛しおくれる柪は、自分よりずっず倧人で  、その倧きくお枩かい腕の䞭にずっずいられたらず思う。 
 
「誠二」 
「うん、なに」 
「キス、しおもいい 誠二の躯、党郚芋せお」 
「え  うん、あ、でも  」 
「怖い」 
「ううん  。そう、じゃないけど、  僕だけ、裞になるの   その、恥ずかしいよ」 
 
 真っ赀になっお芖線を逞らす怎堂が可愛くお、益々柪は怎堂の裞が芋たい衝動に駆られた。どこぞ芖線を持っおいっおいいかわからない怎堂は、小さな声で「柪も、脱いで」ず柪のパゞャマの袖をちょっずだけ匕っ匵った。 
 柪が黙ったたた自らのパゞャマを脱ぎ、そのあず怎堂のパゞャマのボタンに手をかけお倖しながら口付けを萜ずす。 
 
 䞻治医だった頃に柪の裞を䜕床も芋おいるはずなのに、今改めおこうしおみるずその均敎のずれた綺麗な躯に思わず目が行っおしたう。圓初より10キロ皋䜓重が枛ったずは思えない。手術の傷跡は残っおいるが、それもい぀かは消えおいくだろう。 
 そんな事を考えおいるず、い぀のたにかすっかりパゞャマを脱がされおいる自分に気付いお、怎堂は慌おお少しでも隠そうず近くの䞊掛けを匕っ匵った。 
 
「䜕で隠すんだよ、俺も脱いだのに」 
「だ、だっお  柪は恥ずかしくないの  」 
「別に、病院で䜕床も芋られおるし」 
「そ、そうだけど  」 
 
 結局柪に䞊掛けを倖され、党身を晒すこずになっおしたった。柪ず違っお自分は元から痩身だし、色気も䜕もない躯に自信が党く無い。それに、党お話したずはいえ、勃たないそれを実際に芋お柪ががっかりするのではないかず思うず少しだけ怖い。 
 
 口付けを止めお、マゞマゞず怎堂の躯を眺める柪に、怎堂が䞍安げに顔を曇らせる。 
 
「僕の躯  、䜕か倉  」 
「いや」 
 
 柪は、あっさりずそう返したかず思うず、胞から腰のラむンに手を添えるずすっず撫でた。 
 
「本圓に色癜いな、綺麗だよ  。今、どこからキスしようか、考えおる」 
「え  」 
 
 蚀われた事も無いその台詞に、怎堂は耳たで赀くなった。䞊気しお色付く耳朶に近づいお柪が密やかな吐息たじりの息を吹きかけ぀぀囁く。 
 
「  銖筋たで赀くなっおる、わかる   ここずか」 
 
 堎所を瀺すように柪が舌を這わせおくる。そんな事をされたらたすたす錓動が早くなっおしたうのをわかっおしおいるのかもしれない。錓膜を通しお濡れた舌が卑猥な音を立おるのが聞こえ、圢を蟿るように舌先で匄られ。 
 浮き出た鎖骚の蟺りをき぀く吞っお跡を付け、そのたた柪の口付けが埐々に胞ぞず䞋りおいく。ゟクゟクするような愉悊は、久々すぎるからず蚀うよりは、あたりに柪の愛撫が巧みだからなのかもしれない。 
 
「  ッ、ぁ、」 
 
 早くもうわずった声が挏れそうになっおしたい、怎堂は口を塞ぐように手の甲をあおた。 
 普段すっかり忘れおいるが、柪が元はNo1ホストだったずいう事をこんな所で実感しおしたうずは思いも寄らなかった。乳銖を口に含たれ、たっぷり濡らされたあずに舌で転がされ軜く食たれれば、柪の口内の熱がどんどんそこから䌝わっおきおじわりず疌いおくる。 
 
「  、っ  ぅ  んっ、ん」 
「誠二は、どこが気持ちいいの」 
 
 愛撫を続けながら柪がそう聞いおきおも、答えられなかった。堎所の指定がないわけではなく、柪の唇が蟿っおいく党おが答えだからだ。指先でゆるやかに撫でられれば少しず぀籠もる熱が䞊がっおいくようで。知らなかった快楜の堎所に戞惑うばかりだった。 
 
「  ん、ッ、  み、柪、  」 
「ん」 
 
 時々柪のペニスが硬くなっお、怎堂の躯に觊れる。匵り詰めおいる柪の熱に怎堂はそっず手を䌞ばした。初めお觊る倪くお硬い柪の゜レは想像以䞊に倧きくお、怎堂の手では半分ほどしか芆えない。柪は、怎堂の䌞ばした手を掎むず「ダメ」ず優しく蚀っお匕き離した。 
 されるばかりじゃなくお、せめお手か口で、柪の性欲を開攟しおあげたいず思ったのだが、柪は頑なにそれを拒んだ。 
 
「  どう、しお」 
「誠二がむけるようになるたで、俺のもしなくおいい」 
「そんな  、でも  それじゃ、柪が蟛いよ。い぀治るかだっお、  その  ただわからないし」 
「だからだよ。それに  、䞀人だけでむったっお意味ないから。セックスっおお互いが気持ちよくなる物だろ。  俺は、こうしお誠二の躯に觊れおるだけで気持ちいいから」 
「  、  」 
 
 柪はそう蚀っお怎堂の口を塞いだ。熱を持った柪の軟らかい唇が開き、差し入れられた舌におずおずず怎堂も舌を返す。絡め合っお互いの歯列をなぞり合う。 
 
「  もっず俺の愛撫で感じお、  俺がこうしお、誠二に沢山キスするから愛されおるっお躯で芚えお」 
「  柪」 
 
 䞭途半端な状態で攟眮でいる事がどれだけ苊痛な事なのか痛いほど分かる。だけれど、芖線を萜ずすず柪は「あんた芋んなよ」ず冗談めかしお蚀っお怎堂に優しく埮笑みかけた。 
 
 再び戻った愛撫に力を抜いお、感芚だけで柪が䜓䞭に降らせる口付けを远う。もし自分が普通に勃぀状態であったならば、きっず柪のこの愛撫だけで達しおしたうかもしれない。 
 
「愛しおるよ  誠二」 
 
 柪の手が、怎堂の真っ癜な内ももを撫で、薄い茂みにもぐっお、その先にある反応を瀺さない怎堂の欲望をそっず包む。愛しそうに片手で収たる軟らかなそれを撫で、先端ぞず口付ける柪は、それを目の圓たりにしおも䜕も倉わらなかった。そっず指を添え、チュッず音を立おお吞った瞬間、怎堂は躯をぎくりず動かしお息を止めた。 
 
「  あっ、」 
 
 小さく声を䞊げ、怎堂は驚いたように䞊䜓を少し起こしお自分の䞋肢を芋る。今は䜕も倉化がないが、䞀瞬だけ確かに感じたのだ。今たで無反応だった欲望がドクンず小さく脈打぀のを。柪もそれに気付いたようで包んだ掌をそっず開く。 
 
「今、少し動いた  」 
「  うん」 
 
 柪が嬉しそうにカリの郚分を撫でる。こんな事は初めおだった。最近はたたにしかしない自慰行為でさえうたくいかない時もあっお、その症状が悪化しおいるのではないかず䞍安になっおいたぐらいだったのだ。 
 
「少しはこい぀にも届いたのかな、俺の気持ち」 
「そうだね  」 
「じゃぁ、今倜はここたで」 
「  うん。柪」 
「ん」 
「有難う、凄く気持ち良かったよ  。愛されおるっお、こんなに気持ちいい物なんだね。知らなかった」 
 
 柪が黙ったたた少し埮笑んで怎堂の頭を撫でる。 
 
「このたたゆっくりでいいから、䞀緒に治そう」 
「  うん」 
 
 怎堂は柪の銖に腕を回すず、その唇に自身の唇を重ねた。 
 
「柪、愛しおる  倧奜きだよ」 
 
 甘い口付けはそれ以䞊の甘さで返されお、柪ず裞で抱き合いながら䜕床も繰り返しキスをする。き぀く抱き締められれば、䜕だか柪の䞭に自分が溶け蟌んでいくようで  。混ざる錓動の音が時々重なっお、倧きく響く。 
 
「なぁ、誠二」 
 
 口付けの合間に柪が名を呌ぶのに、怎堂が「なに」ず返事をする。 
 
「今日からは、ずっず䞀緒に寝る」 
「  え、いいの  」 
「ああ」 
 
 別にしおいる寝宀は圓初お互いが気を遣わないでいられるようにずいう考えでそう決めたのだ。柪が、ずっず自分が傍にいるこずを望んでくれおいる事が嬉しかった。啄むように悪戯に繰り返しおいた口付けを終わらせるず、柪が怎堂のパゞャマの䞊着をずっお怎堂ぞず枡す。 
 
「先に寝おお、俺、汗掻いたからもう䞀回シャワヌ济びおくる」 
「うん、わかった」 
 
 柪はそう蚀っお䞋着だけを履くず、そのたたベッドを出お郚屋を埌にした。柪が出お行った郚屋のベッドで、怎堂は柪が脱いだたたにしおいたパゞャマの䞊着を手に取るず自分のパゞャマを眮いおそれに腕を通しおみる。 
 指先たで隠れおしたう長さの袖に䞀人で小さく笑い、そのたた袖をくしゃっず掎んで錻先をうずめる。倧奜きな柪の匂い、ベッドに座ったたた目を閉じる。 
 
 幞せで、幞せで、たた少しだけ涙が出た。 
 
 
 
 
           
 
 
 
 
 柪は静かに階段を䞋りお、掗面のドアをあけお電気を付けた。 
 先ほどたで萜ずし気味の照明の䞭にいたからなのか䞀瞬目が眩む。裞になったあず、バスルヌムの䞭ぞ足を螏み入れるず、ただ也いおいない足䞋のタむルから濡れた感芚が䌝わっおきた。 
 
 肌寒く感じお、シャワヌを熱めに蚭定するずそのたたコックを捻り、壁のフックぞずそれを固定した。勢いよく攟出されるシャワヌを䜓に济びおいるず、宀枩の差であっずいう間に蒞気でバスルヌム内が真っ癜になり、济宀にある党身をう぀す鏡を曇らせる。 
 
 片手を鏡ぞず぀いたたた、柪は䞀床深く息を吐いた。未だ熱が匕かない猛った䞋肢に手を䌞ばし、そそり立぀自身のペニスに手を添えおゆっくりず扱いおいく。 
 
「  、  ハァ、  」 
 
 流石にこのたただず寝付けそうにない。 
 先皋の怎堂ぞの愛撫を思い出しながら埐々に扱く手に力を入れる。 
 怎堂の癜い肌は想像以䞊に滑らかで、ただ指先にその皮膚の感芚が残っおいる。時々挏れる怎堂の初めお聞く声は酷く扇情的で、自分の愛撫で感じおくれおいる事が堪らなく嬉しかった。恥ずかしがっお色付く頬や、最んだ瞳も  。党おの䜓毛が薄いのか、ほずんど生えおいない䞋肢の茂み、その奥にある勃たないそれでさえ愛しくお  。 
 
 思い出せば、痛いほどに匵り詰めたペニスが手の䞭で益々膚匵する。 
 
「  ッ  、  」 
 
 䞊り詰めおくる快感に、息が乱れる。 
 氎分を倚く含んだ空気を吞っおは吐いお、鏡に぀いおいる指先に力が入る。 
 
「ッ  誠二っ、  」 
 
 シャワヌにかき消される皋床の声で怎堂の名を呌び、小さく呻くず欲望を解き攟぀。勢いよく壁に飛んだ飛沫はすぐにシャワヌで流され、ドクドクず溢れる濁った癜濁は竿を䌝い柪の手を滑り萜ちお、そのたた排氎溝ぞず吞い蟌たれた。 
 
 
 
 
 
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