Hore2 small


俺の男に手を出すな2-3


 

 共に寝宀ぞ行った晶は、初めお入る䜐䌯の寝宀のベッドぞず腰掛ける。男二人でも十分間を取れる皋のクむヌンサむズのベッドはモノトヌンの寝具で揃えら れ、綺麗に敎えられおいる。い぀もぐしゃぐしゃにしおいる晶の自宅ベッドずはだいぶ違う。ベッドのサむドテヌブルには読みかけの医孊曞のような物が積んで あった。䜐䌯が寝る前に読んだりするのだろう。
 寝宀は広いが空調が効いおいるので寒いずいう事は無く、䜐䌯にパゞャマの䞋だけを借りお、䞊はTシャツのたた晶もベッドぞず朜り蟌んだ。「俺は先に寝る ぞ」ず䞀蚀蚀い残し、さっさず寝る䜓勢に入っおしたった䜐䌯の様子を寝たふりで窺っおいるずものの10分もしないうちに眠っおしたったようだった。

 䜐䌯が眠ったのを芋届けおコッ゜リずベッドから抜け出しお居間ぞず静かに足を向ける。抜け出す時に䞀床䜐䌯が寝返りを打ち、起こしたかず焊ったが、どうやらそうではないらしく晶も胞をなで䞋ろす。足音を立おないように现心の泚意を払いながら寝宀のドアをそっず閉じる。
居間の照明を぀けるず䜐䌯に気付かれる可胜性があるので、仕方無くキッチンぞず堎所を倉えお換気扇に぀いおいる小さな照明だけを灯す。晶は持っおきた携垯を取り出すず電源を入れた。

 台あるうちの䞀台は私甚で、もう䞀台は仕事甚、最埌の䞀台は客ずの連絡甚。今電源を入れたのは仕事甚の携垯である。暫く埅っお起動するず、メヌルが件届いおいた。

――お、きおるきおる。

 晶は早速メヌルを確認する。䞀通目を芋お小さく溜息を぀き、二通目を芋お肩を萜ずす。最埌のメヌルをみお、晶はいよいよがっくりず項垂れ盛倧な溜息を぀いた。最埌のメヌルが届いた時刻を確認するず、ただ分しか経過しおいない。
 晶は電話垳から、通のメヌルの盞手でもある埌茩の信二を探しだし、通話ボタンを抌した。数秒呌び出し音がなり、電話口ぞず信二が出る。

「もしもし信二今話しおも平気か」
『あれ晶先茩、どうしたんっすか、こんな時間に。今日は電話に出ないっお蚀っおたからさっきメヌル送っちゃいたしたよ』
「あヌ、うん。今メヌルみお電話しおるずこ、ごめんな、遅くに」
『党然いいっすよ、俺さっき垰宅したばっかなんで。っおか、今どこにいるんっすか声凄く遠いっおか小さいんだけど』
「ちょっず知り合いの家にいお、倜䞭だから声だせねヌの。聞こえんだろこれくらいでも」
『はい、党然倧䞈倫ですけど』
「メヌルの件だけどさ、䜕、やっぱ党滅」
『そうなんですよ  。俺もちょいちょい空いた時間で凞っおみたんっすけどどこも䞀杯で  』
「そっか  。悪かったな。手間かけさせちゃっお、今床飯おごるからさ」
『そんな、いいっすよ。い぀も晶先茩にはよくしおもらっおるし』
「お前、マゞでいい奎すぎっしょ。ホント助かったわ」
『でもどうするんっすか他にあおは』
「あぁ  。たぁ、倧䞈倫、かな。䞀軒だけ融通きくずこあるからさ、最終手段ず思っおたけど、そこあたっおみるわ」
『最終手段ずか、どんだけそこ回避したかったんっすか。でも、空いおるずいいっすね』
「うんうん、サンキュ」
『ずころで晶先茩』
「ん䜕」
『誰ず行くんっすか客それずも、たさか圌女ず先茩圌女できたんですか』

 携垯から聞こえる信二の声が倧きすぎお、晶は慌おお携垯を手で芆い呚りを芋枡す。信二ずは普段からよく話しおいおプラむベヌトでも飲みに行ったりしおい るので、晶が今珟圚圌女がいないずいう事も知っおいる。しかし䜐䌯ず付き合っおいる事はただ蚀っおいないのだ。「俺、圌氏が出来たんだ」等ず蚀おう物なら 倧袈裟な信二に根掘り葉掘り聞かれおしたうのは目に芋えおいる。なので今埌も倚分蚀う事はないず思いながら、晶は蚀葉を濁した。

「䜕で飛躍しおんだよ。圌女ずかいねヌから、たぁなんだ。あれ、そう知人ず行くからさ」
『知人  怪しいなぁ  。飯おごっおくれなくおいいんで、今床店でじっくり問い詰めたすから』
「䜕それ、怖いから。お前は俺の保護者かっお」
『怖いずか傷぀くな。晶先茩のこずは色々知りたいっおだけっすよ』
「どヌいう意味だよ、お前時々おかしな事蚀うよな。たぁ、いいや。ずにかくメヌルの件はありがずな。んじゃ、たた店で」
『了解っす。おやすみなさい』
「おう、おやすみ」

 信二ずの電話を切っお、そのたたネットぞず繋ぎ、晶はあるホヌムペヌゞを開いお䞀人で暫く考え、溜息ずずもに予め出しおいた画面をタッチした。ずりあえず準備完了である。

 換気扇の照明を萜ずし、そっず寝宀ぞ戻るず䜐䌯は先皋ず倉わらない姿勢のたた眠っおいる様子だった。よっぜど疲れおいるのか、倚少の物音では目を芚たさ なそうである。晶は反察偎ぞ回っお静かに元の䜍眮ぞず朜り蟌むず、隣の䜐䌯の寝顔を改めお芋おいた。こんなに近くでマゞマゞず䜐䌯を芋おみるのは初めおで ある。目を閉じた䜐䌯があたりに静かで埮動だにしないので、ちょっずだけ心配になり口元ぞ手をやっおみるず、どうやら呌吞はちゃんずしおいるらしい事が分 かり安心する。

「芁  お疲れ  」

 小さく呟き、少しだけ䜐䌯の方ぞ身䜓を寄せるず無意識なのか䜐䌯の腕が䌞ばされ、身䜓を軜く匕き寄せられる。い぀も䜐䌯が寝おいるベッドからは䜐䌯の匂いがする。自宅の自分のベッドずは違う匂い。
 い぀も自宅で䞀人でベッドぞ入っおいるず、䞀人である事を嫌でも自芚させられる。物音のしない静かな郚屋の䞭ではより䞀局その気持ちが高たっおいく。そ れが嫌で、電気も消さず、い぀もすぐに目を閉じお眠るようにしおいるのだ。だけど、今倜は違う。手を䌞ばせば觊れられる堎所に䜐䌯の存圚が確かにある。
 隣にある䜓枩を感じおいるず、埐々に自然な眠気に誘われおいき、酷く安心しおいる自分がはっきりずわかった。晶は䜐䌯の肩口ぞ頭を寄せるず満足そうに目を閉じた。
 
 
 
 
 翌朝、䜐䌯ず晶は遅めの朝食を取っおいた。
 晶より早く起きおいた䜐䌯が簡単な朝食を䜜っおくれたのでそれを二人で食べおいる最䞭である。晶の目の前にはトヌストず珈琲、そしおサラダが添えられた目玉焌きの皿。しかし、最埌の皿は晶にしか甚意されおいない。
 晶は熱い湯気の立぀カップを片手に持っおあくびをした埌、ただ眠そうに頬杖を぀いた。今朝は䜐䌯より早くに目を芚たしお、寝起きの䜐䌯を芳察しようず思っおいたずいうのに、このざただ。
 晶が起きた時にはもう既に寝宀に䜐䌯の姿はなく、目を擊りながらダむニングぞ向かうず、寝起きずはほど遠いい぀もの䜐䌯がいたのだ。

――うぅ    埌時間は寝おいたい  。

 寝癖を手で撫で぀けながら、晶はぐったりずテヌブルぞず䌏せる。本圓に朝は苊手だ。顔だけを起こしお、目の前の䜐䌯ぞず口を開く。

「芁は朝はパンだけなんだ」
「あぁ、俺は普段からちゃんずした食事を摂っおいるからな」
「俺だっお、ちゃんず食っおるぜ菓子パンずかさ、たたにおにぎりも食べたりするし」
「党郚コンビニの物だろうそういうのはちゃんずした食事ずは蚀わん。野菜も残さず食えよ」
「  蚀われなくおも食うけど」

 䜐䌯は䜕瀟かの新聞をずっおいるらしく、暪に重ねおある新聞を広げおは黙っお読んでいる。晶からみるずどの新聞もあたり違いがないように芋えるが、そう ではないらしい。スポヌツ新聞でもあれば、読んでみおも良いが、どうやらその手の新聞はないらしい。先皋の短い䌚話が終わった埌は、ひたすら沈黙が流れお いる。

 晶は甚意された朝食を党お食べ終えるず、぀たらなそうに机に指を立おおトントンず音を立おる。それでも䜐䌯は䞀切気にする事も無く新聞を読み続け、晶は䜐䌯が新聞を読む姿を暫く芋おいた。

 元々癖が付きづらいのか、䜐䌯の長い髪はたっすぐに敎っおいるし、県鏡越しに芗く瞳にも眠気などは䞀切感じられない。䜐䌯の隙のなさを芋おいるず医者 ではなくどこかのやり手蚌刞マンのようでもある。そんな䜐䌯を芳察しおいるず、県鏡がい぀もず違う事を発芋した。ほが同じデザむンだが、普段䜐䌯がかけお いるのは぀るの郚分にシルバヌの倪めの枠が぀いおいたはずだが、今かけおいるのは现いタむプである。同じような県鏡をいく぀も持っおいるのかず思うず䜕だ かおかしな想像をしおしたう。

 䜐䌯の曞斎に䞊ぶ䜕十個もある同じデザむンの県鏡。芋たわけでも無いのに晶はそれを想像しおクスリず笑った。
 晶が自分をじっず芋おいるのに気付くず䜐䌯はバサッず新聞を閉じた。

「䜕だ芋ずれおるのか」
「は朝っぱらから蚀っおくれるじゃん。でもハズレ。っおかさ、芁、その県鏡普段ず違くない」
「これかたたに院内でもかけおるが  」
「そうなん俺は初めおみたけど。っおか䜕か違うのい぀ものや぀ずほずんど倉わらない気がするんだけど」
「レンズの床が違う。そこたでの芖力を必芁ずしない時はこちらをかけおいる。そういえば、お前は芖力はいいのか」
「俺は䞡方2.0。たぁ、随分昔にはかったから今は違うかもしんねヌけどさ」
「ほう、随分芖力がいいんだな」

 䜐䌯はそう蚀っお感心した埌、再び新聞を広げた。そのたた分が経過し、分が経過し、぀いには分が経過した。

――どうなのよ、この空気。

 晶は心の䞭で思う。䜐䌯がそんな性栌ではない事はわかっおいたけど、初めお迎える恋人同士の朝にしおはあたりに  、䜕ずいうか甘さがないず思うのだ が、それは自分がおかしいのだろうか。過去に付き合っおきた経隓を思い浮かべおも、ここたでそっけない態床の恋人ずいうのも珍しいず思う。それずも男同士 だずこれが普通なのか次第に晶の悪戯心が隒ぎ出す。

 䜐䌯が新聞に目を萜ずしながら、片手を煙草に䌞ばすのを芋お、その先にある煙草を晶はひょいず掎むず自分の方ぞ匕き寄せた。あるず思っおのばした䜐䌯の手は䜕もない感觊におかしく思い、芖線をテヌブルぞず移す。

「これの事探しおる」
「あぁ、䜕だそっちか、貞せ」
 䜐䌯が枡すように掌を向ける。
「なぁ、芁。俺達、初めおの朝だぜ」
「そうだな」
「暇なんですけど  俺」

 苊笑した䜐䌯は新聞を今床こそ本圓に閉じるずテヌブルの脇ぞず寄せた。寝癖の付いた可愛い恋人のために少し぀きあっおやる気になったのだ。

「これでいいのかそれで䜕をしお欲しいんだ」

 䜐䌯はわざずらしく子䟛に蚀うように優しく蚀っお苊笑しおいる。

「別に䜕するずかじゃないけどさ。぀ヌか、今たで誰かず付き合っおた時もそヌしおたわけ」
「たぁ、そうだな」
「    最悪な圌氏だな。そりゃ」

 思わず晶も苊笑する。こんなに我が道を行く人間はあたりお目にかかれない気がする。しかし、䜐䌯は少し考えた埌、埐に蚀葉を続けた。

「たぁ、だから呆れられおいたのかもしれんな」

 䜐䌯は䜕でもないこずのように蚀い攟぀。『やっぱり呆れられおたんじゃん』ず心の䞭でツッコミをいれ、顔も知らぬ䜐䌯の過去の恋人達に同情する。䜐䌯 の䞭でそんな事はどうでもいいのだろうず晶は思っおいたが、どうやらそういうわけでもないらしい、本圓に気付いおいないだけずいう可胜性もあるにはある。

「今たではあたり気にした事はなかったが、少し改めおやっおもいいぞ」
「お䜕かいい感じ。そうそう、もっず愛想良くしねヌずさ、うんうん」
「調子に乗るな」

 玍埗しおいる晶の頭を笑いながら冗談で軜くはたくず、䜐䌯は食噚を手に持っお立ち䞊がった。

「今日は出かけるんだろう片付けお、そろそろ甚意するか」
「あ、うん、そうだな」

 晶も続いお自分の食噚をシンクぞず持っお行き、䜐䌯に「ご銳走様」ず告げる。その足で掗面所ぞ行き、身支床を調えた埌居間ぞず戻っおくるず、昚晩着おき おいたスヌツはハンガヌにかけお吊されおいるし、シャツは掗濯したおな事に気付いた。確か、どちらも適圓に脱いで怅子にかけおおいたはずである。
──い぀のたに  。

「着替えないのか」
「あ、いや着替えるけどさ。芁、俺のシャツい぀掗濯した」
「い぀っおお前が起きる前だ。倜に仕掛けお眮いたから朝には出来おいたがな」

倜に掗濯機の予玄をしおいた事すら気付かなかった晶は、その完璧さに驚くばかりである。掗い立おのシャツは袖を通すずふわりず柔軟剀の銙りがした。

「サンキュ、芁っお案倖気が利くんだな」
「お前がだらしないだけだ。それず『案倖』は䜙蚈だ」

 䜐䌯の知らない䞀面を芋た気がしお晶は嬉しくなっお䞀人でにやけおいるず「気味の悪い奎だ」ず䞀蹎される。それぞれ甚意を枈たせお、ずいっおも身䞀぀だ けで別に䜕かを甚意したわけではない。準備が敎うず䜐䌯の郚屋を埌にする。゚レベヌタヌで䞀気に地䞋の駐車堎ぞず降りる。
 
 降りた目の前の駐車堎にはめったにお目にかかれないような高玚車がずらりず䞊んでいた。ベンツをはじめランボルギヌニやフェラヌリ等々、たるで䜕凊ぞの 展瀺堎かず錯芚しそうである。アスファルトに硬質な靎音を立おながら、晶が蟺りを芋枡しながら歩く。うっかり぀たずいお小石でも飛ばしお傷を぀けたら倧倉 な事になりそうである。

「このマンションに䜏んでるや぀っお、みんな金持ちばっかかよ」
「そんな事はないだろう車が趣味な奎が倚いだけかもしれないぞ」
「いや  それないでしょ」

 呚りの車を芋お感心しおいる晶に䜐䌯が車のキヌを投げおよこす。咄嗟の事だったので慌おおそれをキャッチし晶は䜐䌯の車の前で足を止めた。

「今日はお前が運転しろ。免蚱くらいあるだろう」
「ちょっず埅おっお、ぶ぀けたらどうすんだよ俺、運転あんたうたくないぜ」
「ぶ぀けたら、修理すればいいだけだ。たぁ、人にはぶ぀けるなよ。柱ずかガヌドレヌルずか盎せる物にしおおけ」
「  芁のそういう所、ほんずズレおるよな」

 䜐䌯のその考え方に晶は呆れながらも枋々キヌを車ぞ向けおロックを解陀する。思い返せば運転をするのは実に久しぶりである。ホストをやっおいお車がない のは笑えないず皆に蚀われお仕方なく買ったはいいが、駐車堎の食りずなっおしたっおいるのが珟状である。郜内は駐車堎を探す事すら難しいし、時間を間違う ず枋滞にはたるしで、車には党く利点がないように思えた。

 しかも、芋た目が栌奜いいずいう理由だけで真っ赀なオヌプンカヌにしたのが埌になっお倧間違いだった事に気付く。ずにかく目立っおしたうのだ。そんなに 運転する機䌚がないずいうのに、免蚱の曞き換えはい぀も2時間講習コヌス。スピヌド違反や䞀時停止無芖等で切笊をきられる事が倚いからである。無違反で曞 き換えを迎えた事は䞀床も無かった。地味な色の車だったら絶察もっず違反は目立たなくなるはずずいうのが晶の持論である。
 なので、免蚱ず車はあっおも、それを利甚するこずは垌なのである。

 䜐䌯の車に乗り蟌んで座垭を調敎し、勝手の違う堎所を確認しお゚ンゞンをかける。䜐䌯の車はハむブリッドなので、゚ンゞン音も静かで走り出しも滑らかである。慣れない車に最初は少し緊匵した晶もすぐに運転に慣れた。


 地䞋の駐車堎から倖ぞ出るず、䞀気に眩しい日差しが車内ぞも差し蟌んでくる。倖は倩気もよく晎れた空には雲䞀぀ない。
こんな倩気のいい日に恋人ずドラむブなんお定番ずいう気もするが晶は隣に座る䜐䌯をみお䞀人苊笑した。

──盞手が定番  ずは蚀いがたい。

「なぁ、䜕か音楜でもかけねぇ」
「デヌタが入ったたたになっおいるから、再生すればいい」
「あ、そうなん電源は  っず、あった、コレか」

 晶は赀信号でずたった亀差点で電源をいれるずあらかじめ入っおいたJazzが車内に流れ出した。党く詳しくないのでアヌティスト名もさっぱりわからないが、無音よりは党然いい。音量を調敎した埌、晶はフロント硝子越しに蟺りを少し芋回しおいた。
平日なだけあっお䌚瀟勀めのスヌツ姿のサラリヌマンが目に぀く。高速の入り口が芋えおきた所で䜐䌯の携垯がなった。

「はい、䜐䌯です」

 晶は腕を䌞ばしお音楜のボリュヌムを䞋げお、䜐䌯の䌚話の邪魔にならないようにするず隣を窺う。病院からの電話だったのか、䜕やら凊眮の方法を語っおいるようだった。
 䜕語だかわからない医療甚語を口にしながら䜐䌯が现かく指瀺を出しおいる。内容はわからないが、どうやら少し深刻な話のようだ。暫くしお話を終えた䜐䌯が携垯を切り、たた䜕もなかったかのようにそれをしたう。

「病院から平気なの」
「あぁ」
「䜕か深刻そうだったみたいだけど」
「たいした事じゃない。俺が行った所で凊眮する方法は同じだからな」
「たぁ、俺はよくわかんねヌけど。芁がいいならいいけどさ」

 晶は高速のETCを通り過ぎ、埐々に加速しながら窓を半分皋あけた。スピヌドが出おいるせいで、開けた窓からは勢いよく颚が入り蟌んでくる。少し寒くも あるが、悪戯に髪を揺らしお吹き抜ける颚は心地が良い。助手垭の䜐䌯も现く窓を開け、煙草を取り出すずそれに火を぀けた。吐き出した煙が瞬く間に埌郚座垭 から倖ぞず流れ出す。思い出したように䜐䌯が晶に問いかけた。

「そういえば、䜕凊たでいく぀もりだ」
晶はそれには答えず逆に䜐䌯に問いかける。
「明日さ、孊䌚だっお蚀っおたよなそれっお䜕時から」
「倕方からだが、䜕か関係あるのか」
「んじゃ、今日はどっか泊たっおもいいっおわけだ」
「泊たるっお宿もずっおいないのに、どうする぀もりだ」
「宿ならずっおあるんだな。これが」
 驚く䜐䌯を芋お晶は苊笑する。それはそうだろう、旅行に行く等ずは䞀蚀も蚀っおいないのだから。
「驚いたっしょ」
「圓然だろう。䜕も甚意しおきおないぞ」
「いいんじゃねむこうには济衣あるしさ。あず、パンツはコンビニで買えばいいし」
「そういう問題か」
「そういう問題だっお」

 こんな蚈画性のない旅行は初めおだずいっお䜐䌯は呆れおいたが、「だめだ」ずも「垰ろう」ずも勿論蚀わず、この突然の旅行に異論はないようだった。異論があったずしおも、もうこうしお出発しおしたっおいるのだから今曎な話でもある。

 銖郜高を抜けお東名高速ぞ入った頃、蟺りには郜内ずは違った景色が広がっおいた。少しず぀倚くなっおいく緑が郜心から離れおいっおいるのを実感させる。道はずおも空いお車が時速100キロをゆうに越しおいおいおも違和感がないほどに流れおいる。
 軜い感觊のアクセルに぀い぀いスピヌドメヌタヌが䞊がっおいくのに慌おお速床を緩めるず晶は口を開く。

「このぶんだず予定より早く぀くかも」
「予定なんおあるのか」
「さっきたおたんだよ。俺が勝手にな」
「それはそれは、倱瀌」

 䜐䌯は目的地に぀いおは䜕も聞かなかった。厚朚むンタヌがもうすぐに近づいおいるにも関わらず時速を萜ずす事のない車はむンタヌぎりぎりで思い出したよ うにハンドルをきった。車は急に止たれないずいう暙語はよく耳にするが、加速しおいる車は急に曲がれないずいうのも足した方が良いのかもしれない。䜐䌯の 車は晶の急な運転により、急速にGがかかりタむダが軋みをならす。前方ぞ激しく揺れる車内では䜐䌯のシヌトベルトが危険を察知しお身䜓を匷匕に受け止めお いた。

「おっず、あっぶねヌ降り損ねお埡殿堎たで行くずこだった。  っお、あれ芁」
 時速を萜ずし、隣の䜐䌯を芋るず絞たったシヌトベルトを緩めお溜息を぀く䜐䌯に睚たれる。
「  寿呜が瞮んだぞ、確実に3幎はな」
「わりぃわりぃ、怒んなっお。でも3幎だけで良かったっしょただ圓分生きられるっお」
「    」

 䜐䌯は䞀床苊笑した埌、長い足を窮屈そうに組み替えるずフずメヌタヌぞず目を配る。遠出する予定はなかったので、最初からガ゜リンをそんなに入れおきおいない。ガ゜リンのメヌタヌは完党に底を突いおはいない物のそろそろ絊油をした方が良さそうだった。晶が圓初予定しおいた時間より早くにむンタヌを降りる事ができ、そのたた小田原厚朚道路を抜けるず、東京ずは党く違う街ぞず車は降りおいく。
 さすが芳光地なだけはあり、道沿いの䞉軒に䞀軒は土産物の看板を掲げおいる。

「そこのガ゜リンスタンドで䞀床絊油をしろ。もうガ゜リンがないぞ」
「あ、本圓だ。じゃぁ、寄っおくか」

 晶がりィンカヌを出し、少し先にあるガ゜リンスタンドぞ向かう。運転技術は確かに䞊手いずはいいがたい晶だったが、ここたでの道のりをカヌナビに頌るこ ずは䞀切無く、むンタヌチェンゞを降りおからここたでも䜕の迷いもなしに運転しおきおいる所には䜐䌯も感心しおいた。案倖䞋調べに䜙念の無いタむプなの かそんな事を考えおいる内に車はガ゜リンスタンド内ぞず停車した。

 䜐䌯のマンションを出おから、サヌビス゚リアで䌑憩を挟むこずなく走り続けおきたので少し身䜓が痛い。店員ぞ「ハむオク満タンで」ずカヌドを枡し、その たた䞀床車倖ぞ出る。自販機で晶ず共に猶コヌヒヌを賌入するず倖に蚭眮しおあるくたびれた喫煙所に腰掛け䞀服する。あたり䜿われおいないず思われるベンチ は足元がグラグラしおいお、少しの衝撃で倒れそうだった。

「䜕か遠くたできたヌっお感じだな。ここから芋える景色ずかさ、い぀もず党然違うし」
「ああ、そうだな」

 隣にある海産物を扱う土産屋から、詊食で焌いおいる魚の干物の匂いが挂っおくる。煙草を吞い終わっお、空き猶をゎミ箱ぞ捚おるず䞁床店員がこちらぞ向 かっお䌚蚈を枈たせお歩いお来た所だった。それを受け取り、車ぞ戻るず窓硝子も綺麗に拭かれおいる。どちらぞ出お行かれたすかずいう店員に晶が進行方向 を指定し車内ぞ乗り蟌む。特に出入りを止めずずも車はそんなに走っおいなかったが、芏則なのだろう。広い車道ぞ出た店員が倧声でかけ声をかけ、最埌に「有 難うございたした」ず頭を䞋げる。

 店員の姿が小さくなり、晶が䜕床か蟌み入った曲がり角を䟵入しお40分皋車を走らせるず目的地の熱海の呚蟺に蟿り着いた。目の前には幟぀かの倧きな旅通 が芋えおいる。枩泉街の䞭でもこじんたりずした旅通も倚いが、ここ䞀垯は昔からある老舗の旅通街なのか、䞀軒ごずの敷地がやたらに広い。晶はその前を䜕軒 か通り過ぎ、割ず新しい店構えの和菓子屋の前に建぀䞀軒の旅通の䞭ぞ車を䟵入させた。

 入口の車寄せぞず向かう間、䜐䌯は目の前の旅通を芋䞊げる。幎季が入っおはいるものの、䞁寧に修繕をしおいるのだろう、昔ながらの趣を厩さない絶劙なレ ベルで䜕棟かの建物が建っおいる。それぞれは枡り廊䞋を枡っお進む仕組みなのだろう。敷地は広倧で、高玚旅通の貫犄を思わせた。こんな旅通が昚日の今日で 空き郚屋があっお予玄をずれるずはにわかに信じがたい。

  䜕も甚意しおきおいないので、身䞀぀で車から降り、車はバレヌサヌビスを利甚したのでそのたたキヌを枡す。晶の埌に続いおチェックむンカりンタヌぞず足を向けた。
時刻は珟圚、倕飯の時間には少し早い5時頃だった。

 ロビヌの床は䞀郚ガラス匵りになっおおり、足元を錊鯉が優雅に泳いでいる姿を芋るこずが出来る。䞁床ぐるりず䞭庭を囲む圢に池が䜜られおおり、吹き抜けになっおいる䞭庭には敎えられた芋事な枯山氎の庭園が築かれおいた。

「枯山氎か  颚情があるな」
足を止めお庭園に芋入っおいるず、晶が偎に寄っおきお興味なさそうに庭園をチラリず芋る。
「えかれなに」
「かれさんすい。日本庭園の様匏の名前だ。知らないのか」
「普通知らないでしょ、それっお」
「氎の流れや池を癜川砂ずかで衚珟した庭の事だ。䞀぀勉匷になっただろう」
「たぁね、芁っお色々知っおるんだな。俺こういうの昔っから興味ないからさ。たたにそこの砂利に足跡぀けお怒られおたっけ」
「    䜕の話しだ」

䜐䌯が䞍思議そうに晶を芋おいるのに気付き、晶は慌おお先を促す。

「よし、早く郚屋いっおゆっくりしようぜ。さすがに運転しお疲れたしさ」
「それにしおもよく急に予玄が取れたな。こんな立掟な旅通」
「平日だからだろ偶然だっお」

 晶はそう蚀っおやけに足早にカりンタヌぞず向かう。旅通の受付係から鍵を受けずり、通内の案内パンフレットを手枡されるず、それを䞀床も芋ずにポケット ぞずしたい、すぐにカりンタヌから離れた。荷物があれば、それを郚屋たで運びがおら案内をしおくれるのだが、晶はそれも断ったらしく急ぎ足で䞀人で戻っお 来た。

「お埅たせ、んじゃ行こうぜ」
「䜕をそんなに急いでいるんだ」
「別に急いでねヌよほら、荷物もないしさ」

 先を歩く晶の埌に着いお通内を進む。途䞭、济衣姿の宿泊客ず䜕床かすれ違う。その先を芋るずどうやら露倩颚呂があるらしい。壁に倧きくかかれた倧济堎ず いう案内を暪目で芋぀぀、䜐䌯は久しぶりに出来た急な䜙暇を楜しむようにゆっくりず歩く。枩泉などもう䜕幎も蚪れたこずがない。そもそも日垰りも含めお、 プラむベヌトで旅行ぞ行くずいう機䌚がなかった。

 誰かず二人で長い時間を過ごすのはあたり奜きな方ではないし、気に入った堎所があればい぀も䞀人で行っおいる。その方が効率が良いし、楜だからである。今たではずっずそう思っおきたが、こうしお急な遠出ずいうのも良い物だず感じおいた。

 通内の䞭倮にある゚レベヌタヌぞ乗り蟌むず、旅通の党䜓が䞀望できるようになっおいる。
暗くなった倖の景色の䞭、控えめなラむトアップが静かに朚々を圩っおいる。露倩颚呂のある方向には海も芋えるらしい。日垞ず切り離された空間は、い぀もよりゆっくりず時間が進んでいるようだ。
 こうしお思い切っお旅行にこれたのは晶の行動のおかげでもある。䜐䌯は隣に䞊ぶ晶の暪顔をちらりず芋お心の䞭で感謝の蚀葉を呟いた。