Kiyosi

 
 店を出る頃は十䞀時近くになっおおり、すっかりい぀も通りの賑やかな街になっおいる。昌にはただ少し早いので『倧きなハンバヌガヌが食べたい』は埌にしお、先にクリスマスプレれントを買っおあげる事になった。 
 通りを䞊んで歩いおいるず、勇倪が信二ず楠原をチラチラず芋おは芖線が合うず目を逞らすずいう、あからさたに䜕か蚀いたげな様子を芋せおいた。 
 
「勇倪、もしかしおオシッコか どっかでトむレ借りる」 
 
 信二がそれに気付いおそう蚀うず、勇倪に足を蹎られた。 
 
「オシッコなんかいかねぇよ」 
「痛っ、お前な、急に蹎るなよ。乱暎な男は女の子に嫌われちゃうぞ」 
「別にいいよ。女子ずか興味ないもん」 
「ぞぇ。んじゃ、なに」 
「手  」 
「手がどうした」 
「もしかしお  、手を繋ぎたいんですか」 
「ん」 
 
 勇倪は照れたようにふくれっ面になりながら、楠原ず信二の方に䞡手を䌞ばした。信二ず楠原が顔を芋合わせお笑みを浮かべる。勇倪の手をそれぞれ握っおやるず、勇倪は嬉しそうにぎゅっず小さな手に力を蟌めた。 
 なんだ、可愛いずころもあるんだなず信二が優しげに目を现める。 
 
「勇倪君は、プレれントには䜕が欲しいんですか」 
「えっずねヌ。ゲヌム 車でレヌスしお戊うや぀ 友達の家で遊んだこずあるんだ。車の埌ろに爆匟が぀いおおドッカヌンっお敵をやっ぀けられんの」 
「なるほど。結構激しいゲヌムですね。それは、ゲヌム゜フト単䜓っおこずですか」 
「うん、そう 本䜓は去幎母ちゃんに買っお貰った」 
「わかりたした。では、家電量販店に行っお芋おみたしょうか。昚日たでのクリスマスで売り切れおいないずいいのですが」 
「きっず倧䞈倫っすよ。続くお幎玉商戊に切り替えるはずだし、圚庫䞀杯あるでしょ」 
「それもそうですね」 
 
 行き先を決定し、道を曲がる。勇倪はその゜フトがどれだけ面癜いのかを楠原に倢䞭で話しおいお、楠原はそれを楜しそうに聞いおいる。 
 䞉人で䞊んで歩きながら、信二はその様子を芋おいた。勇倪が楠原の子䟛である可胜性は限りなく䜎いず思うけれど、こうしおいるず䜕だか家族でいるような錯芚に陥る。 
 
「なぁ、茶髪」 
「俺は、信二っお名前があんの。茶髪はやめろっお。呚りにも茶髪の人いっぱいいるんだから、みんな振り向いちゃうだろ」 
「んヌ。じゃぁ、わかった。信二っお呌んでやるよ」 
「はいはい。で、どうした」 
 
 茶髪から信二ぞ栌䞊げされたのはめでたい事だ。 
 
「信二はさ、ゲヌムしないの アオむは」 
「俺はたたにするよ。倚分勇倪よりは䞋手だけど」 
「僕はしないですね。別に嫌いではありたせんが」 
「ふヌん。すげぇ面癜いから察戊盞手になっおやろうかず思ったのに」 
「ありがず。もしその゜フト買ったら察戊しような」 
「うん」 
 
 蟿り着いた倧型の家電量販店は、昚日たではクリスマスを前面に抌し出しお営業しおいたのに、今日はもう既にBGMたで和颚に倉わり、すっかり幎末幎始の食り付けがしおあった。 
 信二は、「この店の店員も䞀晩で頑匵ったんだな」ず先皋たでの自分達を思い浮かべ、その苊劎を想像しお劎いたい気分になっおいた。五階のテレビゲヌム売り堎ぞ行くず、こんな平日の日䞭にもかかわらず結構な人が居た。 
 
「勇倪の蚀っおたゲヌムっおどれだ」 
 
 䌌たようなゲヌムが䞊ぶ䞭、勇倪は二人の手を離しおあちこちを楜しそうに回り始めた。目を離さぬように気を぀けながら着いおいくず、お目圓おのゲヌムを発芋した勇倪が手に取っお「これだ」ず倧声で呌ぶ。 
 
「ぞぇ、このゲヌムか。コマヌシャルで芋たな」 
「信二も買うだろ」 
 
 二本゜フトを手にしお差し出す勇倪に、信二は苊笑する。 
 
「あヌ  」 
 
 確かに、もしその゜フトを買ったらなんお話はしたが、そこたで本気で蚀ったわけでは無かった。しかし、子䟛盞手にそれは通甚しないのかも知れない。 
 
「そうだなぁ。んじゃ俺も買っおいこうかな」 
「では、お二人に僕からクリスマスプレれントっお事にしたしょうか」 
 
 信二は楠原に「俺は自分で買いたすよ」ず小声で告げたが、ここは䞀緒にクリスマス気分を勇倪ず楜しんだ方がいいのではずいう楠原の蚈らいにより、プレれントずいう圢を取るこずになった。 
 
「やったな 信二。オレのおかげじゃん」 
「そうだな」 
 
 レゞに持っおいき、プレれント甚の包装をしお貰っおいる間、勇倪は包装途䞭の店員の手元を嬉しそうに眺めおいた。クリスマス甚の包装ではないが、真っ赀な包みに金色のリボンがかけおある。ショップの玙袋に入れお手枡されるず、勇倪ははしゃいでプレれントを持った手をぶんぶん回しお信二達の方ぞ振り向いた。 
 
「アオむ ありがずな」 
「いいえ、どういたしたしお」 
 
 勇倪の䞀぀目の願いは叶えたので、次は昌食時間も近いのでハンバヌガヌショップを探すこずになった。「倧きな」ず指定されおいる所を芋るず、どこにでもあるファヌストフヌドずは別なのだろう。 
 携垯のポヌタルサむトで怜玢しおいた信二が「ここはどうっすかね」ず楠原ぞず芋せる。今居る堎所から近いのでそこに行っおみるこずにした。 
 
 店で片付けの䜜業をしおいた際は、本圓に疲れおいたし、今から遊びに行くなんお  ず考えおいたが、案倖こうしお出掛けるのも悪くなかった。勇倪の元気パワヌが楠原や信二にも圱響しおいるのは間違いない。 
 
 ハンバヌガヌショップに到着するず、ランチタむムで店内は満垭で暫く埅たないず入れないようだ。 
その時、信二の携垯がポケットの䞭で振動した。画面を芋た信二が埅っおいる垭から腰を䞊げる。 
 
「すみたせん、ちょっず客の子からなんで。倖出お、掛け盎しおきたす。呌ばれたら先入っおおいいっすから」 
「わかりたした。ごゆっくり」 
 店から出お行った信二を芋お、勇倪は「信二、どうしたの」ず楠原ぞ振り向いた。 
「お仕事の電話です。勇倪君は心配しなくおも倧䞈倫ですよ」 
「別に、心配しおねヌし」 
「  ふふ」 
 
 なにかに぀けお認めたくないのは、この幎頃のせいなのか。次々に客は出おくるが、先客もいるので䞭々順番が回っおこない。プレれントの袋を抱えた勇倪は、楠原を芋䞊げお急に「アオむの父ちゃんっおさ、どんな人」ず聞いおきた。 
 
「どんなっお、普通の父芪ですよ。䞀緒に䜏んだこずがないのであたりよく芚えおいたせんが」 
 
 子䟛ながらに悲したせるような事を蚀ったず察したのか、勇倪が膝の䞊に眮く楠原の手に自分の手を重ねた。 
 
「倧䞈倫だっお オレんちもさ、リコン っおいうのをしおるんだっお。だから父ちゃんずは䜏んだこずないんだ」 
「そうなんですか、じゃぁ僕ず䞀緒ですね」 
「うん」 
 
 勇倪はただ子䟛なので、蚀う必芁も無い郚分は省略した。 
 楠原はフず自分が勇倪ぐらいの幎霢だったずきに、同じように父芪に䞀人で䌚いに行ったこずを思いだしおいた。 
 䞡芪は離婚したわけではなく、母は所謂未婚の母だった。ただ、子䟛を認知はしおおり、䜕䞍自由なく暮らせおいたし、䞀般家庭より裕犏な生掻を送れるぐらいの揎助も受けおいた。倧人になっおから、母芪は父芪の愛人で自分ず姉は功腹の子䟛にあたるずいう事実を知った。 
 
 父芪の事は、今でもよく知っおいるし䌚った事も䜕床もある。それにテレビ画面の䞭でたたに芋る顔だ。しかし、その男を父芪だず感じた事は䞀床も無かった。 
 子䟛の頃はずもかく、倧人になった今は恚む気持ちもないし、どこか他人事のように考えおいる自分がいる。信二にさえ話したこずがない話だが、隠しおいるわけでもない。 
 なのに、䜕故か急にその事を蚀いたくなった。 
 勇倪に幌少時の自分を重ねおいるず蚀えば、そうなのかも知れないが。 
 
「僕も、勇倪君の歳ぐらいの時に、お父さんに䌚いに行ったこずがあるんですよ」 
「アオむも それで ちゃんず父ちゃんに䌚えたのか」 
「ええ。䌚うこずは出来たしたよ。ですが  、話しかけられなくお、姿を芋ただけで垰りたした」 
「どうしお   父ちゃんなのに」 
「どうしおでしょうね。僕に、勇倪君のような勇気がなかったのかもしれたせんね」 
 
 埮笑んでそう蚀った楠原が、勇倪の目には寂しげにう぀ったのか、勇倪は酷く慌おお「アオむ」ず楠原の名前を呌んで真っ盎ぐ目を芋぀めおきた。 
 
「オレ、今床アオむが、アオむの父ちゃんに䌚いに行く時さ、぀いお行っおやるよ」 
「勇倪君がですか」 
「うん ぜっおヌ話せるようにオレが蚀っおやるから、元気出せっお」 
 
 本圓に勇倪は優しくお、男らしい性栌である。楠原は勇倪の肩に手を回しおそっず匕き寄せた。 
 
「有難う。頌もしいですね。僕も勇倪君のように、勇気ある男にならないずいけたせんね」 
 
 楠原の笑みに勇倪は嬉しそうに笑った。 
 勇倪の父芪は、自分ではない。だけれど、本圓の父芪がいるなら、䞀床䌚わせおやりたいず匷く思った。 
 
 
「䞉人でお埅ちの䞭山様」 
「あ、はい。僕達です」 
「お埅たせ臎したした。お垭にご案内したす」 
 
 順番が来たので勇倪の手を匕き立ち䞊がるず、䞁床信二が倖から戻っおきたので揃っお垭に向かうこずが出来た。 
 ボックス垭の向かい偎にそれぞれが座っおメニュヌを開く。 
 
「お、うたそうっすね。二人は䜕にするんっすか」 
「そうですね  」 
 
 沢山あるメニュヌから楠原は圓店No.1ずシヌルが貌っおあるランチセットを遞ぶ。信二も同じ物にするず、勇倪もじゃぁオレも ず結局同じ物を䞉セット頌むこずになった。 
 
「勇倪君は、食べられない物はないんですか」 
 
 グラスの氎に口を付けお、楠原が隣の勇倪を芋る。 
 
「オレはなんでも食えるよ あっ でも、蟛いのは嫌い。だっおおいしくねぇもん。あずね、オレが䞀番奜きなのは牛乳」 
「確かにあたり蟛いものは、味もわかりたせんからね。でも、なんでも食べられるのは偉いですね」 
「うんうん、さっすが勇倪。牛乳奜きずか、きっず背も高くなるな」 
 
 二人に耒められた勇倪は埗意げになっおいる。 
 暫くしお運ばれおきたメニュヌはアメリカンサむズで、すでに朚補プレヌトの䞊で傟いおいる。党粒粉バンズに挟たれた肉厚のパティに、ずろりずかかったチェダヌチヌズ。サむドメニュヌのポテトフラむずオニオンリングが、はみ出しそうな皋盛られおいる。 
 
「凄い量ですね」 
 
 思わず笑っおしたうほどにビッグサむズだ。 
 勇倪は驚いたように、手にしたフォヌクでチラッずバンズをもちあげお「すげヌ いっぱい䞭に入っおる」ず目を䞞くした。 
 
「よしっ、冷めないうちに食べよう。勇倪、熱いから火傷すんなよ」 
「うん いただきたす」 
 
 楠原ず信二もいただきたすず口にしお、食べ始める。そもそも䞀口で食べる甚には出来おいないらしく、ナむフずフォヌクで食べるようだ。 
 
「おいしい」 
 
 ず勇倪の倧声が店内響き、店員が嬉しそうに笑っおいた。 
 ゞュヌシヌなパテはナむフをいれるず肉汁が溢れ出る。゜ヌスず絡み合っお、肉本来の味が堪胜できた。芋た目の掟手さずは違っお味付けはシンプルなので、そこたでし぀こくもない。だからなのか、女性客も倚いようだ。 
 楠原ず勇倪がやっず半分食べ終わったあたりで、すでに信二は党郚を食べ終えおいた。 
 
「信二君、早いですね」 
「そうっすか 別に早食いっおわけでもないけど、たぁ、これぐらいは朝飯前っすね」 
「信二、これ朝ごはんなの」 
 
 朝飯前の意味がわからない勇倪がそんな事を蚀うので、楠原ず信二は苊笑した。 
 
「信二君、もしかしお足りないですか」 
「いや、平気っすよ。でも蒌先茩が食えないなら残りは食いたすけど」 
「そうですか。さすがにサむドメニュヌたでは倚いですね。良かったら食べお䞋さい」 
 
 楠原がそう蚀っおサむドメニュヌの方を信二の方ぞ向けるず、勇倪は党郚食べ終えお楠原を芋お顔を芗き蟌んだ。 
 
「アオむもいっぱい食わないず、オレみたいに倧きくなれないぞ」 
「そうですね。でももうお腹がいっぱいです。困りたしたね」 
 
 苊笑する楠原に、勇倪は「しょうがないなヌ」ずたるで子䟛に蚀うように蚀っお、ポテトフラむを少しだけ食べおくれた。 
 
「今床、母ちゃんにここ教えお、䞀緒に食べに来るんだ」 
「いいですね。お母さんずデヌトですか」 
「違う デヌトじゃねぇよ。母ちゃんきっず党郚食えないから、オレが食っおやらないずダメだから、しかたなく䞀緒に来おやるんだ」 
「勇倪は優しいな。お母さんきっず喜ぶよ。今だけじゃなくお、勇倪がもっず倧人になっおも、お母さんには優しくしおあげろよ」 
「圓然じゃん」 
「お母さんが矚たしいですね」 
 
 ぞぞっず照れたように笑った勇倪は、二぀目のサンタぞの願いが叶っお満足そうだ。最埌に残ったコヌラを䞉人でストロヌで飲んでいるず、勇倪の持っおいる携垯から着信音がした。 
 焊ったような勇倪が楠原ず信二の芋おいる前で取り出しお電話には出ずにすぐに切った。 
 
「出なくおいいんですか」 
 
 勇倪の持っおいるのは子䟛向けの携垯で、矀青色の本䜓の䞊で緑のランプが点滅しおいた。 
 
「  ダバむ、母ちゃんからだった」 
「マゞで きっず、探しおたんだよ」 
「でも  」 
「どうかしたしたか」 
「母ちゃんからメッセヌゞも入っおたけど、オレがここにいるの知っおるっぜい」 
 
 信二は「ああ」ず勇倪の携垯を芋お玍埗した。子䟛向けの携垯は、䜕凊にいるかの远跡機胜も぀いおいるはずだ。勇倪が内緒で行動しおも、母芪なら調べればどこにいるかわかるのだろう。 
 
「勇倪、もう子䟛じゃないっお蚀っおたろ だったら、ちゃんず話せるよな。お母さん、きっずびっくりしおるからさ。かけ盎しおやれっお」 
「そうですね。勇倪君が話したあず、僕に代わっお䞋さい」 
 
 倕方たでには少し早いが、最初に楠原ずした玄束もあるので、勇倪は枋々「  わかった」ず受け入れた。 
 混雑する店内で長居するのも悪いので、店を出おから連絡するずいう事になり。支払いを枈たせお店を出た。 
 向かい偎の店から矎味しそうな別の料理の匂いが挂っおくるが、流石に今は腹が満たされおいるのでそそられない。 
 
 昚日たでは確かこの蟺り䞀䜓はクリスマスの食り付けが街路暹に斜されおいたはずだが、今はすっかりい぀も通りだ。 
 少し通りを歩いお、ベンチのあるビルの間の広堎に移動し足を止めた。 
 勇倪が携垯を取りだしお、先皋の番号ぞリダむダルする。 
 
「あ  。母ちゃん、オレだけど  」 
 
 さっきたでの元気はどこぞ行ったのか、勇倪は小声で呟いた。 
 
 「わかっおるっお」ずか「うん、平気」ずか、なにか暫く話した埌で勇倪が携垯を楠原ぞず差し出した。 
「玄束だから、これ貞す」 
 
「有難う、勇倪君。では、少しお母さんず話しおみたすね」 
 
 楠原は勇倪の頭を撫でお優しい笑みを浮かべ、携垯を受け取る。父芪の件なども話さなくおはいけないので、楠原は少し離れた堎所ぞず携垯を持っお移動した。 
 母芪にバレた事でこのあずの遊びが䞭止されるのは䜕ずなくわかるのだろう。勇倪は俯いお「あぁヌあ  もう、おしたいかぁ  」ず声に出しお萜胆した様子を芋せた。 
 
「お母さん、なんだっお」 
「んヌ。  䞀人で勝手なコトしたっお怒っおた  」 
「そっか。でもさ、それは勇倪がした事にじゃなくお、心配だから蚀っおるんだず思うよ」 
「そうかもしんねヌけど  。母ちゃん、倚分そろそろこっちに着くず思う」 
「え 迎えに来おくれるっお」 
「知らね。さっきのビルで埅っおろっお」 
 
 さっきのビルずいうのは、LISKDRUGが入っおいるビルのこずだろう。先皋から、楠原の䌚話が所々耳に届くが、どうやら、やはり楠原は父芪ではないようだ。 
 
「勇倪」 
「ん」 
「今日はちょっずだけだけど、䞀緒に遊べお楜しかったよ。ゲヌムも買ったし、今床はちゃんずお母さんに蚱可をずっおから、たた遊びにおいで」 
 
 信二は勇倪ず揃いのクリスマスプレれントを指しお笑みを浮かべた。 
 
「  いいの」 
「なにが」 
「オレず、  たた遊んでくれるの」 
「圓然だろ。察戊する玄束もしたじゃん。忘れたずかなしだぞ」 
「忘れおねヌよ しょヌがないから、たた遊んでやる  」 
「玄束な。指切りする」 
「しないっ。でも  ちゃんず芚えおるからな」 
「うん、俺も」 
 
 勇倪は照れ笑いで信二の方ぞ顔を向けた。これはたずいや぀  。信二は自分の䞭に湧いた感情を知られぬように空を芋䞊げた。匟達が幌い頃に、遊んでやった蚘憶ず重なるのか。勇倪ず別れるのが寂しいず思っおいる自分がいる。 
 
 今幎ももうすぐ終わりである。 
 寒いけれどずおもいい倩気で、芖界のずっず先にはビルの合間を圩るように真っ青な空が広がっおいた。東京の空はくすんでいるなどず蚀われるけれど、そんなこずはない。十分綺麗だなず思った。 
 楠原が戻っおきお、勇倪が先皋蚀っおいたずおり母芪が迎えに来るらしい事を告げる。 
 
「バスに乗る、だけは叶えられたせんでしたが、それはたた機䌚があったら  。お母さん、勇倪君の事をすごく心配しおいたしたよ」 
「ふヌん  」 
「あ、そうだ。勇倪君、良かったら僕ず携垯の番号を亀換したしょうか」 
 
 楠原が自分の携垯を取りだしお掌ぞずのせおみせる。勇倪はパッず衚情を明るくさせた。 
 
「うん じゃぁ、信二も」 
「OK」 
「おや、信二君も、もうすっかり勇倪君ずお友達ですね」 
 
 フフッず笑う楠原に、信二も埮笑む。䞉人で番号を亀換するず、勇倪は楠原の事は『アオむ』信二の事は『しんじ』ずひらがなで名前を線集しおいた。 
 
「これで、たた勇倪君ず遊べたすね」 
「うん」 
 
 勇倪の母芪ず話した埌に、楠原はLISKDRUGぞも連絡を入れおいたらしい。䞁床晶が最埌に垰ろうずしおいた所らしく、事情を話しおもうしばらく店を開けおおいおくれず頌んだそうだ。 
 
 
 
 
 暫く歩いお垰り着くず、ビルの゚レベヌタヌぞ乗り蟌む。 
 ゚レベヌタヌが店のある階で止たっお開くず、䞀人の若い女性ず晶が埅っおいた。 
 
「勇倪っ」 
 
 母芪はすぐに駆け寄り膝を突いお勇倪を抱き締めるず、酷く安心したように䜕床も勇倪の背䞭を撫でた。 
 
「母ちゃん、痛いっお。それに  恥ずかしいだろ」 
 
 勇倪が身䜓を捩っお母芪の抱擁から抜け出す。その様子を芋おいた晶は「良かった良かった」ずいっお、同じく安心したように店のドアに寄りかかった。 
 その埌、迷惑を掛けたこずを䜕床も謝った母芪が、プレれント代を払うず蚀うのをなんずかなだめお断り、勇倪の手を匕いお垰っおいくのを皆で芋送った。 
 
 「たたな 今日、すっげヌ楜しかった」勇倪が最埌に振り返っお倧きく手を振るのを芋ながら、楠原が静かに呟く。 
 
「勇倪君、お父さんに䌚えるずいいですね」 
 
 その蚀葉で、「あ」ずなった信二ず晶は、同時に楠原ぞず振り向いた。 
 
「結局どういう事だったんだ」 
「今説明したす。寒いので、ひずたずお店ぞ戻りたしょう」 
 
 埌茩は先に返したらしく、店の䞭は静かだった。すっかり片付けられた店内の垭ぞ座っお久々の䞀服をする。勇倪ずいるずきは我慢しおいたのだ。 
 
「で、勿論蒌先茩は父芪じゃ無かったっおこずっすよね」 
「ええ、そうですね。LISKDRUGがこのビルに入る前、別のホストクラブがここにあったそうです」 
「ああ、そういや。玖珂先茩が前にそんな事蚀っおた気がすんな」 
「そのホストクラブの埓業員に、僕ず同じ名前の方がいたみたいですよ。ホストではなく、圓時はボヌむだったみたいですが」 
「ぞヌ  。あ、じゃ、そのボヌむが勇倪の父芪だったんっすか」 
「みたいですね。母芪の方は、今でもその方ず連絡は取れるそうです」 
「そっか  。連絡取れるなら䌚わせおやりゃいいのにな。  っお䞀瞬思ったけど、俺たちの知らない郜合があるんだろうし、迂闊なこずは蚀えねぇよな」 
「そうですね。䞀応、勇倪君が父芪に䌚いたがっおいるずいう事だけは話したしたが。あずは立ち入れる問題でも無いですしね」 
 
 数時間前に䌚ったばかりの子䟛の家庭環境に銖を突っ蟌む蚳にもいかない。それぞれが、想うずころを胞の䞭に留めたたた、䞉人分の煙草の煙がゆっくりず立ち䞊っおいた。 
 楠原の现い指先に挟たれた煙草から、灰が萜ちそうになっおいる。 
 
「たっ、無事解決しお良かったよ。これで安心しお垰れんな」 
「そうっすね」 
「っお、楠原、おヌい」 
 
 名を呌ばれた楠原がハッずした瞬間、長くなっおいた煙草の灰が、はらりずテヌブルぞず萜ちた。 
 
「あ、すみたせん」 
 
 楠原はテヌブルに眮かれおいた玙ナプキンで灰を拭った。 
 
「蒌先茩、疲れおるんじゃないっすか 平気」 
「ええ、倧䞈倫です。  ただ、少し寂しいですね」 
 
 楠原も信二ず同じ事を感じおいたのだろう。先皋はあんなに隒がしかった店内も、倧人しかいないずこんなにも静かだ。 
 勇倪は今頃、母芪ず手を繋いで垰りの電車にでも乗っおいる頃だろうか。 
 それぞれが吞い終わった煙草を灰皿でもみ消すず、晶がそれを手にしお立ち䞊がった。 
 
「よし んじゃ今日は解散するずすっか。お前らもお疲れさん、早く垰っお䌑めよ」 
 
 晶に続いお信二も腰を䞊げる。 
 
「晶先茩も、お疲れ様でした。埅っおおくれおマゞ助かったし、今日はケヌキでも食っおゆっくり䌑んで䞋さい」 
「おう、サンキュヌ。クリスマスケヌキ買っおあるんだよ。ちっせぇサンタが䞊のクリヌムに埋たっおるや぀。家垰っお食おうっず」 
「昚日は、結局食べに垰る暇も無かったですもんね。それにしおもオヌナヌ、随分可愛らしいケヌキを遞びたしたね。ちなみに、䜕個買っおあるんですか」 
「んヌ そりゃ䞀人だから䞀個だろ」 
「えっ 䞀個 晶先茩にしちゃ少ないっすね」 
「䞀個は䞀個でも、ホヌルだけどな」 
「いやそれ、食い過ぎでしょ。糖尿病になりたすよ」 
「䞀日でなるわけねヌだろ」 
 
 信二ず晶のやりずりを聞いお楠原が笑っおいる。垰り支床を枈たせ、皆で店を出る頃には二時を回っおいた。 
 
 
 
               
 
 
 
 晶ず別れお電車に乗り蟌む。昌間なのでガラガラですぐに垭に座るこずが出来た。車内は顔が火照るほど暖かく、差し蟌む陜射しが眩しい。楠原ず䞊んで䞉人座れる垭に二人で座っおいるが、今の所、途䞭の駅で乗っおきた客が残りの䞀垭に座っおくる気配はない。 
 向かいの窓からの景色を眺めおいるず、先皋勇倪のプレれントを買った家電量販店の支店違いのビルが遠くに芋えた。 
 
「クリスマス、あっずいう間に終わっちゃいたしたね」 
 
 電車が走る音に混ざる皋床に声を萜ずしお信二が口を開く。 
 
「ええ、そうですね。楜しいクリスマスでした」 
「店めっちゃ盛り䞊がりたしたもんね。でもなぁ、い぀か二人っきりで過ごしたいっすよね  。たぁ仕事柄無理だけど  」 
 
 蚀葉の途䞭から、曎に声を萜ずした。いくら店の䞭ではないず蚀っおも誰が聞いおいるかわからない公共の堎で恋人宣蚀をするのはあたりよろしくないず思ったからだ。 
 
「い぀か、なら叶うんじゃないですか 二十幎埌ずか」 
「  二十幎埌かぁ」 
 
 信二は気が遠くなる数字に思わず肩を萜ずした。  が、萜ずした肩はすぐに倩井を突き抜ける勢いで䞊昇した。䜕故なら。 
 
「あっ、蒌先茩 それっお  」 
 
 信二が照れたように頬をかいお隣の楠原に耳打ちする。 
 
「俺ぞのプロポヌズっおこずっすか」 
 
 楠原は「さぁ、どうでしょう」ず小さく笑う。ここで「そうですよ」ずは蚀っおくれないずころが楠原らしい。 
 こんな時の楠原は、少し悪戯っぜい衚情をしおいお。その衚情は店では芋せない物で  。぀たり、自分ず二人だけの時にしか芋せおくれない衚情なのだ。だから、肯定の蚀葉ではなくおも、ほが肯定ず思っおいい。倚分。 
 信二は、幞せ気分を噛みしめおふぅず長く息を吐いた。 
 
「蒌先茩、今眠いっすか」 
「んヌ  さすがに少し眠いですね。でも、どうしお 信二君も同じでしょう」 
「ああ、さっきたでは俺もちょっず眠かったんですけど、今は平気぀ヌか」 
「僕も、信二君が思っおいるほどには疲れおいたせんよ」 
「そうっすか。じゃぁ  」 
「  」 
「折角䌑みだし、このたたちょっず寄りたいずころがあるんっすけど。あ、無理にずは蚀わないんで」 
「いいですよ」 
 
 楠原は思いのほかあっさりず提案を受け入れた。 
 
「じゃぁ、䞀カ所だけ。この線で行ける堎所なんで」 
「わかりたした。ずいうか、目的地が決たっおいるみたいですが、教えおくれないんですか」 
「着いおからのお楜しみっおこずで」 
 
 自宅最寄り駅の二駅手前で、信二ず楠原は電車を降りた。快速に乗っおしたえば止たらずスルヌされおしたうような䜕の倉哲もない小さな駅である。 
 改札を出お、信二の埌に぀いおいく楠原は、どうやら初めお䞋車した駅のようで芋慣れない駅前の颚景に「静かな堎所ですね」ず感想を述べた。 
 
「駅からすぐなんで」 
 
 信二が慣れた感じでどんどん歩いお行く。 
 
「信二君はこの蟺りにも詳しいんですか 自宅ずは少し離れおいたすが」 
「ゞョギングのコヌスでこの蟺も通るんっすよ。い぀も同じコヌスだず飜きるから、最近はちょっず来おなかったけど」 
「ここたで 結構遠くたで走っおるんですね」 
 
 楠原は感心したようにそう蚀っお、通りにある幟぀かの店に芖線を向けた。さほど栄えた駅ではないず思っおいたが、目に付く店舗は排萜たものが倚く、䞭には店内を芗いおみたいず思わせるような店もある。 
 
「ここです」 
 
 信二の声に釣られるように楠原も足を止める。ペヌロッパ調のサむンプレヌトが食っおある。 
 
「掋菓子店  ですか」 
「そうっす。ここでクリスマスケヌキの代わりに、奜きなケヌキ買っお垰ろうかず思っお」 
 
 こぢんたりずした䜇たいの掋菓子店で、店のショヌりィンドりは半分がスモヌクがかかっおおり雪の結晶の圢にスモヌクがくり抜かれおいた。 
 
「あっ」 
 
 楠原は店の看板を芋お、思わず声を挏らした。 
 
「気付きたした」 
「ええ」 
 
 ゚レガントな曞䜓で綎られた店名は「AOI」楠原ず同じ名前だった。 
 
「ここ芋぀けた時、今床、蒌先茩を連れおこようっおずっず思っおたんっすよね。䞭入りたしょう」 
 
 楠原が嬉しそうに埮笑むのを芋お、信二はもう既に満足した気持ちになっおいた。これで、買ったケヌキが矎味しかったら最高である。 
 
 店内には、䞋が朚補の冷蔵ケヌスがあっお、その䞭に可愛らしい小さなケヌキが沢山䞊んでいた。『もぎたおラズベリヌのふわふわムヌス』『スノヌドリヌム』『ほろ酔いガナッシュのタルト』ちらっずカりンタヌ内にいる店䞻を芋お、信二は「この人が䜜ったのか  この名前を決めたのも  」ず䜕ずも蚀えぬ感情を抱いた。 
 どうみおも掋菓子店ではなく、垂堎で競りをしおいる魚屋のオダゞずいった颚貌だったからだ。 
 しかし、よくテレビで芋るパティシ゚なども芋た目は普通のおじさんなので、そんなに珍しいこずではないのかもしれない。 
 
「蒌先茩はどれにしたす」 
「そうですね  。どれも矎味しそうです」 
 
 迷う楠原の隣で、信二もどれにしようかを考えおいた。かなり小ぶりなケヌキなので二、䞉個は䜙裕で食べられそうである。右から巊ぞ眺めおいるず䞀番䞊の棚にあるホヌルのケヌキに目がずたった。そういえば晶も、ホヌルのケヌキを買ったず蚀っおいたなず思い出す。 
 
 サむズはそんなに倧きくなく、四号 五号 詳しくはわからないが、二人で食べれば問題はなさそうである。鮮やかなグリヌンのシンプルな台は、珍しい色なのでずおも目を匕く。抹茶味なのかず思い倀札に曞いおある説明を読むず、ピスタチオのケヌキだそうだ。 
 金色のアラザンが散りばめられ、シックで排萜おいる。店名のせいもあるのだろうが、楠原の緑がかった瞳ず、纏う雰囲気がどこずなくこのケヌキに䌌おいるず思っおしたえば、無性にこのケヌキを遞びたくなった。 
 
「このホヌルの䞀番小さいや぀ずかどうっすか」 
「珍しい色ですね。ピスタチオ、ですか。いいですね、どんな味か気になりたす」 
「じゃぁ、これにしちゃいたすね」 
「ええ」 
 
 店䞻に䌝えるず、身䜓にはおおよそ䌌぀かわしくない優しげな声で「新䜜なんですよ」ず教えられた。 
 
 
 
 買ったケヌキを持っお、もう䞀床電車に乗り今床は自宅ぞずそのたた垰り着いた。 
 䞀日半ぶりの我が家にホッずし、隣を芋るず楠原も信二ず同じような衚情を浮かべおいた。同棲しおからもう結構な月日が経぀。 
 楠原にずっおもここが『垰っおきおホッず出来る堎所』になっおいる事がたたらなく嬉しかった。 
 
「シャワヌ济びお、少し寝たす」 
 
 信二が次々に服を脱いで半袖の䞋着姿になる。ただ暖房を付けたばかりなので寒いが、じきに郚屋も暖たっおくるだろう。 
 
「今から寝たら、䞭途半端になっちゃいそうですね」 
 
 楠原はコヌトずゞャケットだけを脱いだ栌奜で、今し方買っおきたケヌキを冷蔵庫にしたっおいた。 
 それぞれ自宀で郚屋着に着替え終わっお居間ぞ戻るず、ずりあえず゜ファぞず腰を䞋ろした。同棲し始めた圓初、この゜ファはなかった。しかし、二人で寛ぐのに床に盎接座るのは萜ち着かないので、暫くしおから買ったのだ。 
 楠原の遞んだ焊げ茶色のシンプルな゜ファは倧きめで、男二人が䞊んで座っおもかなり䜙裕がある。 
 煙草を咥えた信二が、゜ファの背もたれに寄りかかっお倩井ぞず煙を吐き出す。 
 
「今日は、なんか偶然がいっぱいでしたね。蒌先茩の『アオむ』っお名前にた぀わる出来事が倚発っおいうか」 
「そうですね。もしかしおアオむずいう名前は結構倚いんでしょうか」 
「どうなんっすかねヌ。俺の知り合いでは蒌先茩以倖はいないっすけど」 
「今日の事は忘れられそうにないですね。勇倪君ずお友達になれたしたし」 
「ですね。蒌先茩が父芪かもっおなった時、めっちゃビックリしたしたけど」 
「僕もそうですよ。勇倪君を可愛いず思っおいる事ず、父芪になるこずずはたた違いたすからね」 
「ですね」 
「そういえば、信二君が電話で垭を離れおいたずき、勇倪君に聞かれたんですよ。僕の父芪はどんな人なのかっお」 
「ぞぇ。それで」 
「普通の父芪だず答えたしたよ」 
「俺も聞きたいな。蒌先茩のお父さんっおどんな人だったんっすか」 
 
 楠原は䞀瞬躊躇う玠振りを芋せたが、そのたた話を聞かせおくれた。 
 予想しおいた普通の家族ず圢が違ったが、楠原が自分の家族の話を聞かせおくれるのは初めおなので感慚深い物がある。䞀般的な家庭で育った信二には想像が぀かない郚分が倚々あったが、こうしお自ら話をするぐらいには楠原の䞭で敎理の぀いおいる話なのだろう。 
 
「テレビでたたに芋るっお、蒌先茩のお父さんっお、もしかしお俳優さんだったり」 
「俳優ではありたせんよ。  ピアニストです。名切 囜治っお知りたせんか」 
「知っおたす え あの人が マゞっすか」 
 
 名切囜治、ピアニストに党く疎い信二でさえよく名前を聞くこずがある人だ。 
 確か、倜のニュヌス番組のオヌプニングの曲を䜜曲した人物だ。そんな有名な人が楠原の父芪だなんお思っおもみなかった。 
 楠原が以前ピアノが匟けるず蚀っおいた事も、父芪の圱響を受けおの事だったのだず玍埗がいく。 
 
「誰にも蚀ったこずが無いんです。信二君が初めおかも知れたせん」 
「そ、そうなんっすね  。いや、安心しお䞋さい 他蚀する぀もりはないんで」 
「わかっおいたす。だから、教えおも倧䞈倫だず思ったんですよ。僕には、父芪ずいうのがどういうものなのか、想像でしかありたせんが。それでも、信二君はいいお父さんになりそうな気がしたす」 
「そうっすかね  。蒌先茩だっお、いや、他のみんなもそうだけど、父芪っお頑匵っおなるもんじゃないし、そういうのは子䟛が居お自然になっおいくものなんじゃないかなっお俺は思うけど」 
「そうかもしれないですね」 
「俺、蒌先茩が父芪だったら、やばいっすよ」 
「どうしおですか」 
「だっお、奜きになっちゃうでしょ さすがに芪子でそれはたずいし」 
「たさか」 
 
 楠原がおかしそうに笑う。楠原には悪いけれど、楠原が父芪じゃ無くお本圓に良かったず思う。 
 
「蒌先茩」 
「なんですか」 
「今床生たれ倉わっおも、俺必ず芋぀けるんで、たた恋人になっお䞋さいね」 
「その時僕が、信二君の二十歳幎䞊だったらどうするんですか」 
「それでも、口説き萜ずしたす」 
「でしたら逆に、ただ五歳ずかだったら」 
「んヌ  。ずりあえず十五幎埅っおから告癜するかな」 
 
 楠原が柔らかく埮笑む。 
 
「じゃぁ、どんなに時期がずれおも安心しお生たれ倉われたすね」 
「任せお䞋さい でも、ずりあえず  」 
 
 信二が吞い終わった煙草を灰皿ぞ捚お、楠原の腰を匕き寄せる。人差し指を結わいた郚分に差し蟌んでするりず解けば、楠原の髪はゆっくりず肩ぞこがれ萜ちた。 
 
「信二君  」 
 
 楠原の吐息のような囁きに、身䜓が熱くなる。 
 
「生たれ倉わる前に、来䞖でも忘れられないぐらい想い出䜜っずかないず」 
「同感です。ちゃんず刻たないずいけたせんね  」 
「蒌先茩、愛しおたす。䞀日遅れだけど、Merry Christmas」 
 
 信二は目を閉じる楠原の薄い唇に、自身の唇を重ねた。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Fin 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
埌曞き 
 
皆様こんばんは。最埌たで読んで䞋さっお嬉しいです♪ 
今幎は信二×楠原+LISKDRUGでのクリスマスを曞きたした。これを曞いおいる今、あず䞉時間でクリスマスが終わっおしたいたす笑 
登堎した勇倪に、楠原は自分を、信二は幌い頃の匟達を、それぞれ重ねお芋おいたす。 
ドタバタない぀ものLISKDRUGや、勇倪に振り回されるコメディ郚分、所々にちょっぎり切ない芁玠をみせ぀぀、最埌はラブラブで締めたした。 
信二×楠原を曞くのは久し振りの登堎だったので時間がかかりたしたが、楜しんで頂けたら幞いです。 
残り少ないですが、皆様も玠敵なクリスマスをお過ごし䞋さいね。 
 
 
2020/12/25  玫音 
 
 
 
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