窓の外は激しい風が吹いている。その風がはめ込まれた硝子を叩く度に耳障りな音がするが、澪の耳には届いていなかった。
枕元のスタンドに灯りを付け、日中に学んできた事を復習するために、ベッドに転がってテキストの文字列を目で追う。耳にはヘッドフォンをしており、視界に入る文字が英語で読み上げられるのを只管聞いている。
時々小さく真似て発音してみる事もあるが、それは自分の耳にも届かない程度の物だった。三ページ程進んだ所で、澪は徐にそのヘッドフォンを外してベッドサイドの目覚まし時計を手に取った。
もう一時近くなっており、そろそろ寝た方がいいな、と自覚すると同時に眠気が襲ってくる。途切れた集中力は、一気に眠気をぐいと押しつけてきた。
椎堂は今頃自室でもう眠っているのだろうか。
同棲していると言っても、互いに常に人のいる環境で生活するのに慣れていないので、最初のうちは過干渉にならないように過ごそうという決まりにしたのだ。
それは多分自分に気を遣って椎堂が出した提案で……。
確かに一人でいる時間は気が休まるし楽ではある。だけど、椎堂がいた所でそれはそんなに損なわれない程にはもう自然になりつつあった。
扉を一枚。廊下を挟んでもう一枚の扉。その奥に恋人がいるというのは、どこか不思議な感覚である。