俺の男に手を出すな5-5

note5        霧が立ちこめる深い森の中で、澪は何かが近くに寄ってくる気配を感じて静かに背後へと振り向いた。野生の鹿なのだろうか、まだ子鹿であり細い足を真っ直ぐに伸ばして澪を見ている。視線を […]

俺の男に手を出すな5-4

note4       「Dr.シドウ? どうかしました?」     早朝のカンファレンスを終えて移動していた椎堂は、いつのまにかぼーっと窓の外へ視線を向けたまま立ち止まっていた。不思議そうに声を掛けられて我に […]

俺の男に手を出すな5-3

note 3          このままマグカップを持っていたら、間違いなく椎堂はその手からカップを床に落下させるだろう……。そう思って奪い、机に置いたカップからは、未だに湯気がゆらゆらと立ち上ってい […]

俺の男に手を出すな5-2

note 2        その週末、折角の休みだというのに天気は悪く小雨が降ったりやんだりを繰り返していた。   この地域は昼と夜の寒暖差が大きく、晴れた日中は二十度を超すのに、太陽光の少ないこんな […]

俺の男に手を出すな5-1

note 1        日本を離れてこちらに来てから、一ヶ月が経とうとしていた。     来てすぐに椎堂の紹介で入った系列のスクールは、緩和ケア施設でのボランティア活動を目的とする団体が主催している物で常時 […]

俺の男に手を出すな5-0

プロローグ      窓の外は激しい風が吹いている。その風がはめ込まれた硝子を叩く度に耳障りな音がするが、澪の耳には届いていなかった。      枕元のスタンドに灯りを付け、日中に学んできた事を復習するために、 […]