さようなら、初めまして5

──memory5──  携帯の目覚ましアラーム。いつもなら鳴る直前に目が覚めてしまうのでその音を聞くことも無いけれど、今朝は何度か鳴り響いている。竜一はベッドから手を伸ばしてモゾモゾと携帯を探した。だけど、いくら探して […]

さようなら、初めまして4

──memory4──  男が何も言わないで自分を見つめているのがわかる。その表情を窺うのが怖くて顔を上げられなかった。   頬をなぞって落ちてくる雫は、先程の冷たい雨と全然違う。唇に伝えば、それは温かくて塩辛 […]

さようなら、初めまして3

──memory3──  引き戸の玄関をあけて入ると、タオルが飛んでくる。竜一は慌ててそれをキャッチした。    「泊まっていいとは言ったけど、もてなすような物はないぞ。適当に好きにしてろ」&nbsp […]

さようなら、初めまして2

──memory2──  元は良さそうなのに、身なりを構っていないせいで、ただのだらしない男に見える。髪はボサボサ、鼻までずり落ちている眼鏡に無精髭。足下をみると、履きつぶしたスニーカーを履いていた。   男を […]

さようなら、初めまして1

──memory1── 「……死のう」     そう思った瞬間、まだ死んでいないのに凄く気持ちが軽くなった。   いつもと逆の電車に乗り、下調べをした駅で降車する。そう、朝からもう決めていた […]