WILDLUCK6

  ──RIFF 6         どれぐらいそうやって立ち尽くしていたのかわからない。多分数分。だけど酷く長い時間だったような感覚があった。握っている拳、じんわりと血が通い始めた指先をそっと開く。    「……クリス […]

WILDLUCK5

  ──RIFF 5        「だから、あいつはクビにした……。俺が……」  「え、……」     ニールとマットはしょっちゅう喧嘩をしていて、だけどそれでもずっと同じバンドでやってきたのだから、自分にはわからない […]

WILDLUCK4

  ──RIFF 4     クリスの自宅へ向かう道すがら、ビールを買うためにコンビニへ寄る。冷蔵ケースに写り込むサングラス越しの自分の顔を見て、思わず「うわ……」と小さく漏らした。   苛立ちがもろに表れてい […]

WILDLUCK3

  ──RIFF 3       スタジオから出て裏通りに回り、マットの住むアパートメントまで歩いて二十分弱、そんなに遠くもない。メンバーと合わせる時間のロスは発生するが、一人欠けて練習するよりはマシなはずだ。      […]

WILDLUCK2

  ──RIFF 2       大切にロッカーへとしまっておいたフィギュアの事で頭がいっぱいの数時間。   釣り銭は間違えるし、熱い珈琲を溢して火傷しそうになるしで、日が沈む頃にはすっかりニールは疲れ切っていた。    […]

WILDLUCK1

  ──RIFF 1     挽きたてのコーヒーの香りが濃厚に漂う店内。   レジ横のショーウィンドウに並ぶのは店長お手製の数々の焼き菓子。味はいいのだが見た目が一風変わっているので、この街の人間以外の土産にはお勧めでき […]